2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧
ラヴクラフトは1930年からロバート=E=ハワードと文通していたが、1933年まで相手の年齢を知らなかった。1933年3月25日付のハワード宛書簡で彼は次のように述べている。 ところで――あなたがまだ27歳だと最近わかって、私は本当に驚きまし…
昨日の記事でリン=カーターの"Visions from Yaddith"を照会したが、彼のクトゥルー神話詩編といえば代表作は"Dreams from R'lyeh"だろう。ウィルバー=ナサニエル=ホーグという青年詩人に仮託して書かれたもので、31編の十四行詩から構成されている。そ…
リン=カーターに"Dreams in the House of Weir"というクトゥルー神話短編がある。1931年の英国が舞台で、自殺した主人公が遺した日記からの抜粋という体裁の作品だ。 主人公のヘアトン=ペインはサンスクリット語の専門家で、11世紀インドの詩人ビル…
ダーレスは1927年からアルジャーノン=ブラックウッドと文通していたと前に申し上げた。*1ブラックウッドから初めて返事をもらったダーレスは、そのことを1927年1月の手紙でラヴクラフトに報告している。 先日アルジャーノン=ブラックウッドから手…
昨日に続き、C.L.ムーアが1936年10月24日から12月15日にかけて書いたラヴクラフト宛書簡から引用する。話題は多岐にわたっているのだが、アイスクリームのことも書いてあった。 先生がそこまでアイスクリームに耽溺しておられると伺い、私は…
ラヴクラフトがダーレスに宛てて書いた1936年10月24日付の手紙から。 奇怪な物品の話でしたら――先日サンフランシスコ在住の人物から興味深いお便りをもらったんですよ。どうやら学識のある人らしく、スチュアート=モートン=ボランドという名前です…
クラーク=アシュトン=スミスの「プトゥームの黒い僧院長」はゾティークの物語だ。『呪われし地』と『ゾティーク幻妖怪異譚』に邦訳が収録されているので詳しい粗筋は不要だろうが、ルバルサという美少女をホアラフ王の後宮に連れていく兵士たちと宦官が泊…
ダーレスに"The Shuttered House"という短編がある。サック=プレーリーを舞台とした話だが、初出はウィアードテイルズの1937年4月号だ。"The Return of Andrew Bentley"*1や"Wild Grapes"*2と同じく、ダーレスの怪奇文学と郷土文学の交差点になる作品…
Nameless Placesは1975年にアーカムハウスから刊行されたアンソロジーだ。この本に収録されている作品のうち、ドレイクの"Awakening"*1やジャコビの"Chameleon Town"*2やラムレイの"What Dark God?"*3を弊ブログではこれまでに紹介しているが、今回はA…
ベイジル=コッパーに"The Gossips"という短編がある。1973年にアーカムハウスから刊行されたFrom Evil's Pillowを初出とする作品だ。 無名の語り手が25年前のイタリア旅行のことを回想しているところから物語は始まる。グリッソンという英国人と知り…
ダーレスに"Saunder's Little Friend"という短編がある。初出はウィアードテイルズの1948年5月号で、同年アーカムハウスから刊行されたNot Long for This Worldに収録された。その後も様々なアンソロジーに繰り返し再録されており、地味ながら人気作だ…
昨日に続いてアルジャーノン=ブラックウッドの作品集の話題だ。The Listener and Other Storiesには九つの短編が収められている。 幻の下宿人 毒殺魔マックス・ヘンシッグ 柳 The Insanity of Jones 死の舞踏 幻影の人 五月祭前夜 スランバブル嬢と閉所恐怖…
アルジャーノン=ブラックウッドにはThe Wolves of God and Other Fey Storiesという作品集がある。1921年にE.P.ダットンから刊行されたもので、現在では公有に帰しているためプロジェクト=グーテンベルクで読むことが可能だ。 www.gutenberg.org …
昨日の記事で紹介したLeavesの第1号にはエディス=ミニターの"Dead Houses"が掲載されている。ミニター夫人はアマチュアジャーナリズムが縁でラヴクラフトと親交を結んだ人だが、その作品はひとつも邦訳されていない。せっかくなので読んでみた。 "Dead Hou…
1934年5月、ラヴクラフトはフロリダのバーロウ家に滞在中だった。「フロリダはいつもながら爽やかで元気が湧いてきます」「私の活力は北国にいたときの3倍です」とラヴクラフトは5月19日付でダーレスに書き送っている。現地の気温は華氏86度(摂…
Over the Edgeというアンソロジーが1964年にアーカムハウスから刊行されている。収録されている未訳作品のうちライバーの"The Black Gondolier"*1やロングの"When the Rains Came"*2は以前このブログで記事にしたことがあるが、今回はジョン=メトカーフ…
『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』が刊行されてから2年後、1910年にウィリアム=ホープ=ホジスンが幽霊狩人カーナッキの物語を発表した。ラヴクラフトがジョン=サイレンスを愛読していたことは有名だが、カーナッキに対する評価はどうだったの…
ラヴクラフトは1934年8月の下旬に初めてナンタケット島を訪れたと『H・P・ラヴクラフト大事典』にある。この年のラヴクラフトはロバート=バーロウに招待されて5月から6月までフロリダに滞在し、その後ニューヨークに行ってロング一家と一緒にニュー…
ラヴクラフトと愉快な仲間たちの文通で怪奇幻想作家がどれだけ言及されているか数えてみた。英国怪奇三傑にエドガー=アラン=ポオとダンセイニ卿を加えた5人を対象とし、ラヴクラフトの文通相手として特に重要な5人について言及回数を調べることにする。…
クラーク=アシュトン=スミスは1932年3月25日付のダーレス宛書簡でアルジャーノン=ブラックウッドの本の感想を述べている。 最近ブラックウッドの本を何冊か借りて読みました――Tongues of FireとThe Garden of Survivalです。どちらもたいへん気に…
クラーク=アシュトン=スミスの"The Dead Will Cuckold You"を日本語に翻訳してみた。 www7a.biglobe.ne.jp これはゾティークを舞台にした戯曲で、執筆中であることをスミスは1951年2月22日付の手紙でダーレスに知らせている。4月15日、完成した…
昨日の記事で言及した"The Sleepers"という短編のことをダーレスは1926年9月6日付の手紙でラヴクラフトに報告している。 申し上げるべきかどうか迷ったのですが、"The River"を書き直したらライト氏がついに受理してくれました。現在は"The Sleepers"…
ラヴクラフトの蔵書目録によると、彼の家には『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』が2冊あったそうだ。1冊目は1908年にロンドンで刊行された初版本、2冊目は後にニューヨークで再版されたものだという。2冊目はダーレスからの贈物なのだが、ラヴ…
Find a Graveというウェブサイトがある。 www.findagrave.com 墓地のデータベースであり、ラヴクラフトと愉快な仲間たちのお墓を見ることができる。オンライン献花も可能だが、検索機能はさほど強力ではないようだ。たとえばダンセイニで検索しても有名な1…
「アウトサイダー」について、ラヴクラフトは1931年6月19日付のヴァーノン=シェイ宛書簡で次のように述べている。 私は無意識のうちにポオを逐一なぞっており、その極致として「アウトサイダー」は代表的なものです。当時は作風を真似るだけでなく、…
今から100年前、1921年にラヴクラフトが執筆した小説はかなり数が多いが、そのひとつが「アウトサイダー」だ。ウィアードテイルズの1931年6-7月号に「アウトサイダー」が再掲されたとき、クラーク=アシュトン=スミスは1931年6月6日付…
クラーク=アシュトン=スミスがダーレスに宛てて書いた1931年8月18日付の手紙より。 「ガーゴイル像彫刻師」についての御意見はすごくいいですね。ベイツから原稿が返ってくるようなら採用させていただきます。予定どおりに戻されないところを見ると…
ダーレスがラムジー=キャンベルに宛てて書いた1962年5月11日付の書簡より。 1964年に刊行予定のアンソロジーをどうするか計画はあまり固まっていませんが、君の作品は必ず収録を検討させてもらいますよ。ですが第一に君の単行本です。そちらのほ…
今から100年前に書かれた作品として「イラノンの探求」を一昨日の記事で取り上げたが、ラヴクラフトは同じ年に「蕃神」も執筆している。The Fantasy Fanの1933年11月号に「蕃神」が掲載されたとき、ラヴクラフトは1933年11月29日付のクラー…
アーカムハウスから刊行されたラヴクラフトとゼリア=ビショップの合作集についてボビー=デリーが記事を書いている。 deepcuts.blog 1937年にラヴクラフトが亡くなり、ダーレスたちが彼の代作や合作を探し回るところから話は始まるのだが、そのとき助言…