2015-01-01から1年間の記事一覧
ラヴクラフトが1934年9月25日に書いたロバート=バーロウ宛の手紙より。 ブロック少年のことですが――まことに将来有望だと私は考えています。君ほど卓越しているわけではありませんが、進歩しつつありますよ。 ロバート=ブロックは見込みがあるけど…
リチャード=A=ルポフにMarblehead: A Novel of H. P. Lovecraft という長編がある。元々はLovecraft's Book という題名で1985年にアーカムハウスから刊行されたのだが、これは話の長さを半分に切り詰めた短縮版だった。2000年に出た完全版がMarbl…
サンディ=ピーターセンとグレッグ=スタフォードがケイオシアム社に電撃復帰したことは今年のクトゥルー界における十大ニュースのひとつに数えてよさそうだ。そのピーターセンがRedditでファンの質問に答えている。 Sandy Petersen Designer of Cthulhu War…
C.A.スミスが1935年11月頃に書いたロバート=バーロウ宛の手紙より。 人類誕生以前にいたヒューペルボリアの蛇喰族をかたどったとおぼしき彫刻をラヴクラフトが君に転送してくれるはずです。密林に呑みこまれた廃都コモリオムの柱石の直中で、この…
ダーレスに助言してもらうことをラヴクラフトはブロックに勧めたが、ダーレスの指導は容赦がないことで知られており、ブロックも「ラヴクラフトさんの猿真似をするな」と釘を刺されることになる。ラヴクラフトがブロックを励まして曰く―― くじけてはいけませ…
ロバート=ブロックがラヴクラフトと知り合って間もない頃の話である。ブロックの原稿を読んだラヴクラフトは1933年6月頃の手紙で「君には重複表現の傾向がありますね」と注意し、具体例をいくつも挙げている。 君の原稿にはpast & antecedentsとかbase…
Cunliffeさん(id:Cunliffe)が曰く―― というわけでコスミックホラーを嗜んで宇宙的恐怖の前にただ震えるだけの子羊になってみないかい?いあいあ/なんでラムレイはあんまり好きじゃねーです。 http://b.hatena.ne.jp/entry/255674318/comment/Cunliffe Cunl…
ドナルド=ワンドレイといえばラヴクラフトの親友であり、ダーレスとともにアーカムハウスを創設した同志である。ワンドレイこそがラヴクラフトの後継者にふさわしいとフリッツ=ライバーは考えていたという。*1しかし第二次世界大戦が始まるとワンドレイは…
ロバート=E=ハワードが1933年9月頃に書いたラヴクラフト宛の手紙から。西部辺境は正義のない弱肉強食の世界だというラヴクラフトの言葉に反発している。 エドガー=アラン=ポオが貧窮して死んだ場所は西部ではありません。もしも彼が西部で暮らして…
「クトゥルー神話」なる用語はダーレスが考案したものであり、ラヴクラフトは使ったことがないというS.T.ヨシらの説は本当に正しいのかと考察する記事を森瀬繚さんのブログで読める。 molice.hatenadiary.org ラヴクラフトが「狂気の山脈にて」の執筆に…
タイプライタを打ってくれるのであればウィリアム=ラムレイの面倒を見てやってほしいとラヴクラフトはダーレスにいったが、結局「アロンソ=タイパーの日記」の原稿は自分で清書した。友達を頼らなかった理由はラヴクラフト自身が1935年10月23日付…
「インスマスを覆う影」の原稿を読んだダーレスは、知り合いの画家に挿絵を描いてもらうことを思いついた。ラヴクラフトは1932年2月2日付の手紙で「自分は果報者だ」と感謝しつつ「出版のめどが立っていない作品に絵をつけるというのは気が早すぎない…
「インスマスを覆う影」の原稿を読んだダーレスはラヴクラフトにいくつか意見を述べたようだ。その手紙は残っていないが、ラヴクラフトの書いた返信から内容の推測することができる。ダーレスが提案したのは―― 主人公がインスマスの血を引いていることを早い…
ダーレスの罪と罰 いろいろと突っ込みどころの多い文章なのだが、細かい話をひとつ。 アーカムハウスの経営が軌道にのった、1940〜50年代には 1940〜50年代にアーカムハウスの経営が順調だったというのは正しくない。1939年から49年までの10年…
ゴットフリート=ミュルダーといえばフォン=ユンツトの友人であり、かの悪名高い『無名祭祀書』を出版した人物だ。彼は1858年にメッツェンガーシュタインの精神病院で死去したとされているが、これらはすべてリン=カーターの設定である。元々の設定が…
昨日に引き続きH. P. Lovecraft: Letters to Robert Bloch and Others を読んでいる。1934年7月下旬のロバート=ブロック宛書簡には「納骨所の秘密」の感想が書いてあった。 「納骨所の秘密」の現存する部分をありがとうございました。まことにすばらし…
ラヴクラフトのロバート=ブロック宛書簡集がヒポカンパス=プレスから刊行されたので買ってみた。 H. P. Lovecraft: Letters to Robert Bloch and Others : Hippocampus Press, specializes in classic horror and science fiction 約500ページのペーパ…
アーカムハウスのラヴクラフト書簡集には1936年9月30日付のロバート=バーロウ宛書簡が収録されているが、長い手紙であるため約半分が省略されている。削られた部分はO Fortunate Floridian で読むことができ、そこにもなかなか興味深いことが書いて…
マイクル=シェイに"Momma Durtt"というクトゥルー神話短編がある。2012年に発表されたもので、シェイの最晩年の作品だ。 キム=ハースは二十代前半の女性、相棒のアレックスと一緒にタンクローリーで産業廃棄物を運んでいるところだ。途中で立ち寄った…
ダーレスが書いた1931年8月31日付のラヴクラフト宛書簡より。 先ほど差し上げた今日付の手紙に書き忘れていたことがあります。私の作品を3編ライトに推薦していただけないでしょうか――「風に乗りて歩むもの」と"They Shall Rise in Great Numbers"と…
『羊飼いのハイータ』に登場するハスター - クトゥルー/クトゥルフ神話作品発掘記 作家から作家へと受け継がれていく神話の流れを「ハスター神話」は示唆しており、後世の批評家たちがそのことに気づくには何世代もかかったのだとロバート=プライスもThe H…
ラヴクラフトが1934年6月の上旬に書いたダーレス宛の手紙より。 先日シルバースプリングスに行ったのですが、実に壮観でしたよ。シルバー川の源には静かな湖があり、その底は巨大な淵になっています――ガラス底のボートを通して、はっきりと見ることがで…
チャールズ=R=ソーンダーズに"Jeroboam Henley's Debt"というクトゥルー神話短編がある。1982年に発表された作品で、現在はインスマス=フリープレスのサイトで無償公開されているほかThe Book of Cthulhu でも読むことができる。 www.innsmouthfreep…
前回の記事*1で紹介したレイドローの作品はあくまでもフィクションだが、ラヴクラフトが人種主義者であったこと自体は事実だ。人種差別の撤廃を訴えるジェイムズ=F=モートンがラヴクラフトと論争し、そのことがきっかけとなって二人の親交が始まったとい…
マーク=レイドローに"The Boy Who Followed Lovecraft"という短編がある。2011年に発表された作品で、現在もサブタレイニアン=プレスの公式サイトで無償公開されている。 subterraneanpress.com 物語の舞台は1929年、主人公のダグラスはロードアイ…
C.A.スミスの「聖人アゼダラク」ではアゼダラクが姿を消したことが奇跡とされ、アヴェロワーニュの人々は彼を聖人に祭り上げたのだが、実際のところ彼はどこに行ってしまったのか。アゼダラクのその後を語った話をスミスは書こうとしており、構想だけが…
スティーヴン=ジョーンズが編纂したクトゥルー神話アンソロジーWeirder Shadows over Innsmouth にレジー=オリバーの"The Archbishop's Well"が収録されている。オリバーは英国の作家だが、日本ではほとんど注目されていないようだ。唯一、橋本輝幸氏が言…
"The Long Last Night"というクトゥルー神話小説をブライアン=ラムレイが2012年に発表している。クトゥルー復活後の世界を舞台にした話で、新しい邪神も登場する。その名前はBgg'haと綴るのだが、何と発音したらよろしきや。とりあえず「ブッガ」とカタ…
ダーレスがラムジー=キャンベルに宛てて書いた1966年4月21日付の手紙から。 今年の夏は西海岸に行く予定です。子供たちをディズニーランドに連れていくのですが、ブラッドベリ・ブロック・ライバーなど往時のラヴクラフト一門の面々にも会うつもりで…
コリン=ウィルソンがクトゥルー神話小説を書くようになったきっかけが『夢見る力』でラヴクラフトを酷評したことだったというのは有名な話だが、この本が刊行されたときにダーレスとラムジー=キャンベルの間で交わされたやりとりを見てみよう。キャンベル…