新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

火竜ラヴクラフト

1931年6月5日、ラヴクラフトは滞在先のフロリダ州ダニーデンからダーレスに葉書を送り、ヘンリー=S=ホワイトヘッドの家の玄関に蛇が現れたことを知らせている。ホワイトヘッドはその蛇を標本にしてラヴクラフトへの贈物としたそうだが、手ずから蛇…

ラヴクラフトの聖樹

ラヴクラフトが1934年12月30日に書いたダーレス宛の手紙より。 ダーレス君の27日付の手紙が届いたとき、ちょうど一筆したためようとしていたところだったのですよ。ハワード=ワンドレイから君の病気のことを聞いたばかりで、どれほど深刻な容態な…

神の通過

ラヴクラフトが初めてロバート=バーロウに手紙を書いたのは1931年6月25日、サウスカロライナ州チャールストンを旅行中のことだった。フロリダを訪れてヘンリー=S=ホワイトヘッドに会ったばかりだったので、バーロウ宛の手紙にも彼への言及がある…

サイト更新

久々に弊サイト「大凡々屋」を更新。ラヴクラフトの親友だったジェイムズ=F=モートンに関する記事に大幅な加筆を行った。 www7a.biglobe.ne.jp 本当は伝記のカテゴリに移動させたかったのだが、アナーキズムの闘士としてのモートンを掘り下げる作業は私の…

裁かるるジャンヌ

クラーク=アシュトン=スミスがダーレスに宛てて書いた1934年7月22日付の手紙より。 僕はおよそ映画の愛好家ではないのですが、ジャンヌ=ダルクの映画は観てみたいですね。映画を鑑賞した夜はいつも眼精疲労から来る頭痛に悩まされるのですが、そう…

「戸口に現れたもの」余話

1933年8月に「戸口に現れたもの」を完成させたラヴクラフトは清書稿を友達に送って意見を求めた。同年12月4日付の手紙でクラーク=アシュトン=スミスは次のように述べている。 エドワード=ダービーのキャラクターはよく書けていますよ。ひとつ非常…

落ち着きのない水死体

ラヴクラフトがドナルド=ワンドレイに宛てて書いた1936年12月20日付の手紙より。 近ごろ君の作品が雑誌に載っているとのこと、興味深く思います。"Uneasy Lie the Drowned"に眼を光らせておくことにいたしましょう。いかにも期待できそうな題名です…

ジェンディックの沼

ジョゼフ=ペイン=ブレナンに"Jendick's Swamp"という短編がある。 語り手はカークという作家。保安官のクリス=ケリントンが立ち寄ったので、冷えたリンゴ果汁でもてなしているところだ。しばらく世間話をしてからクリスは訊ねた。 「ジェンディック家のこ…

血染めの神の跡

スプレイグ=ディ=キャンプの「血ぬられた神像」はロバート=E=ハワードの作品を改変して主役をコナンに置き換えたものだ。元々の話は"The Trail of the Blood-Stained God"という題名で、一昨日と昨日の記事で紹介した"The Treasures of Tartary"と"Swor…

シャハラザルの剣

昨日の記事で紹介した"The Treasures of Tartary"には続編がある。"Swords of Shahrazar"といって、初出はトップノッチ=マガジンの1934年10月号だ。"The Treasures of Tartary"が掲載されたのはスリリング=アドベンチャーズの1935年1月号なので…

韃靼の黄金

昨日までエル=ボラクのシリーズを紹介していたが、アフガニスタンを舞台にした作品をロバート=E=ハワードは他にも書いている。"The Treasures of Tartary"はスリリング=アドベンチャーズの1935年1月号を初出とし、現在はウィキソースで原文が公開…

白狼の息子

ここしばらくエル=ボラクの話をしてきたが、今日が最後になる。ロバート=E=ハワードの"Son of the White Wolf"はスリリング=アドベンチャーズの1936年12月号を初出とし、現在は原文がウィキソースやプロジェクト=グーテンベルク=オーストラリア…

三尖の災厄

スプレイグ=ディ=キャンプは1955年に「焔の短剣」を発表したが、これはロバート=E=ハワードの"Three-Bladed Doom"を書き直して主役をコナンに差し替えた作品だ。では元々の主人公は誰だったのかというと、エル=ボラクことフランシス=ゼイヴィア=…

イスカンダルの失われた谷

ロバート=E=ハワードの"The Lost Valley of Iskander"がウィキソースで無料公開されている。発表されたのは1974年なのだが、それでも公有に帰しているらしい。 en.wikisource.org この作品はまたの題名を"The Lost Valley of Iskander"といって、エル…

ナイフの国

ロバート=E=ハワードに"Country of the Knife"という短編がある。これまたエル=ボラクが主役だが、コンプリート=ストーリーズの1936年8月号が初出なので、ハワードの死の直後に発表された作品ということになる。現在は公有に帰しているらしく、原…

神々の血

トップノッチ誌の1935年6月号にロバート=E=ハワードの"Hawk of the Hills"が掲載されたと昨日の記事で申し上げたが、その翌月には同じシリーズの"Blood of The Gods"が載り、2号連続で同誌の表紙を飾ることになった。この作品も現在はウィキソース…

丘陵の鷹

昨日に続いてエル=ボラクの話をする。ロバート=E=ハワードの"Hawk of the Hills"はトップノッチ誌の1935年6月号に掲載され、その号の表紙を飾った。現在は原文がウィキソースで無料公開されている。 en.wikisource.org エル=ボラクことフランシス…

好漢エル=ボラク

ロバート=E=ハワードが1935年5月頃に書いたラヴクラフト宛の手紙から。 「永劫より」はとてもおもしろかったです。ラヴクラフトさんのお名前も作者として出したほうがよかったですね。だって徹頭徹尾あなたの作品なのですから。今年の夏にはいくらか…

サタンの下僕

ロバート=ブロックに"Satan's Servants"という短編がある。初出は1949年にアーカムハウスから刊行されたSomething About Cats and Other Piecesだが、執筆されたのは1935年だ。この作品をウィアードテイルズが受理しなかったことを知ったラヴクラフ…

黒い風が吹く

ロバート=E=ハワードに"Black Wind Blowing"という短編がある。 主人公はエメット=グラントンという青年。夜中、ジョン=ブルックマンに呼び出されて自動車を走らせる彼の前に立ちはだかったのは、ブルックマンの使用人のジョシュアだった。殺気立ってお…

もふもふの獣を近寄らせるな!

アルジャーノン=ブラックウッドが1949年に大英帝国勲章を授与されたときの逸話が、マイク=アシュリーによる評伝に書いてある。3月1日にバッキンガム宮殿で執り行われた叙勲式にブラックウッドは燕尾服を着て出席したが、その服は貸衣装だった。料金…

この斧を以て我は治む!

ロバート=E=ハワードに"By This Axe I Rule!"という短編がある。ヴァルーシアの大王カルを主役とする作品だ。 カルを亡き者にして玉座を奪おうとする陰謀がヴァルーシアでは進行中だった。首謀者は詩人リドンド・伯爵ヴォルマナ・軍団長グロメル・男爵カ…

ローマの遺跡

アルジャーノン=ブラックウッドに"Roman Remains"という短編がある。1947年に執筆され、ブラックウッドの生前に出版された最後の作品になった。初出はウィアードテイルズの1948年3月号だ。 vaultofevil.proboards.com ウィアードテイルズに掲載さ…

死者との誓い

順番からいえば今日はロバート=E=ハワードの日なのだが、代わりにシーベリー=クインの"Pledged to the Dead"を紹介したい。ウィアードテイルズの1937年10月号に掲載された短編で、現在はプロジェクト=グーテンベルクで無償公開されている。私の知…

第二世代

アルジャーノン=ブラックウッドに"The Second Generation"という短編がある。初出は1912年7月6日付のウェストミンスター=ガゼットで、その後Ten Minute Storiesに収録された。The Best Psychic Storiesに再録されたものがプロジェクト=グーテンベル…

地上の男

ロバート=E=ハワードに"The Man on the Ground"という短編がある。「老ガーフィールドの心臓」や「鳩は地獄から来る」と同じく南部の怪奇譚に分類される作品だ。邦訳はないが、原文はプロジェクト=グーテンベルク=オーストラリアで公開されている。 gut…

事前従犯人

アルジャーノン=ブラックウッドに"Accessory Before the Fact"という短編があり、プロジェクト=グーテンベルク=オーストラリアなどで無償公開されている。 gutenberg.net.au マーティンは休日の散策を楽しんでいたが、どういうわけか荒野で迷ってしまった…

ダーモッドの破滅

このところアルジャーノン=ブラックウッドとロバート=E=ハワードの作品を交互に紹介しているが、別に意図があるわけではない。そもそもハワードはブラックウッドを読んだことがないと1930年10月頃の手紙でラヴクラフトに語っており、少なくとも直…

ここから電話するかも

アルジャーノン=ブラックウッドに"You May Telephone from Here"という短編がある。元々は新聞小説で、1909年2月27日付のウェストミンスター=ガゼットが初出だ。その後Ten Minute StoriesとStrange Storiesに収録されたが、まだ邦訳はない。 午後1…

滅ぶべし

ロバート=E=ハワードに"Delenda Est"という短編がある。西暦455年にあったヴァンダル族のローマ略奪、その直前の出来事を描いた作品だ。題名は大カトーの言葉として有名な"Carthago delenda est"(カルタゴ滅ぶべし)をもじったものだが、ここではロー…