新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

ラムレイの神話作品

 Cunliffeさん(id:Cunliffe)が曰く――

というわけでコスミックホラーを嗜んで宇宙的恐怖の前にただ震えるだけの子羊になってみないかい?いあいあ/なんでラムレイはあんまり好きじゃねーです。

http://b.hatena.ne.jp/entry/255674318/comment/Cunliffe

 Cunliffeさんのことは尊敬しているし、ブライアン=ラムレイがこのように言われてしまうのも現状では致し方ないと思うのだが、実のところラムレイは「宇宙的恐怖の前にただ震えるだけの子羊」の話も割と書いている。ただ邦訳されていないのだ。
 大まかに分けてしまえば、ラムレイのクトゥルー神話長編は人間賛歌であり、中短編はおおむね救いがない。後者に属する作品としては"The Return of the Deep Ones"*1や"The Changeling"*2や"Born of the Winds"*3などがある。いずれも残念ながら未訳だが、弊ブログで粗筋を紹介してみたことがある。
 もちろん、救いがないからといって優れた神話作品だとは限らない。宇宙的恐怖とは単なるバッドエンドのことではないという指摘もあるだろう。だが"The Sorcerer's Dream"で描かれた虚無的な終末の光景を見るに、ラムレイの神話世界は思いのほかラヴクラフトのそれに近いのかもしれないという気がする。