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主にクトゥルー神話のことなど。

「聖人アゼダラク」余話

 C.A.スミスの「聖人アゼダラク」ではアゼダラクが姿を消したことが奇跡とされ、アヴェロワーニュの人々は彼を聖人に祭り上げたのだが、実際のところ彼はどこに行ってしまったのか。アゼダラクのその後を語った話をスミスは書こうとしており、構想だけが彼の備忘録に残っている。
The Black Book of Clark Ashton Smith by Clark Ashton Smith
 実はアゼダラクは並行世界に逃げていた。その世界の地球では進化の過程が異なっているらしく、住民は人間に似たところがほとんどない。「奇妙にもさかさまのアヴェロワーニュ」にやってきたアゼダラクはその世界における自分と出会い、それぞれの存在意義を賭けた戦いが二人の間で始まるのだった。
 並行世界のアヴェロワーニュが舞台という珍しい話だが、実際に書かれることはなかった。互いに死力を尽くした戦いの末、地の利を得られなかったアゼダラクは敗北し、もう一人の自分に吸収されてしまったということだ。