新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

2012-01-01から1年間の記事一覧

闇の男

ロバート=E=ハワードに"The Dark Man"という短編がある。ゴル=ゴロスが登場する作品として有名な"The Gods of Bal-Sagoth"(未訳)の前日談であり、また「大地の妖蛆」とも関連しているため、クトゥルー神話大系の一部といえるだろう。ウィアードテイル…

恐怖名作百選

スティーヴン=ジョーンズといえば『インスマス年代記』の編者だが、彼は商業・非商業・アンソロジーの三部門で世界幻想文学大賞を受賞したという斯界の大物である。そのジョーンズがキム=ニューマンと組んで編集したのがHorror: The 100 Best Books だ。こ…

ラヴクラフトとポップカルチャー

http://jordankrall.wordpress.com/2011/09/18/edward-lee-interview-2-killer-con-mr-james-and-lovecraft/ 米国の作家エドワード=リーへのインタビュー記事。「クトゥルーがポップカルチャーに取りこまれたことについて、どう思いますか? クトゥルー神話…

黄金髑髏の呪い

ロバート=E=ハワードに"The Curse of the Golen Skull"という短編がある。ヴァルーシアの大王カルのシリーズに属する短編で、カルが王に即位する前の出来事を扱っている。ハワードの死後何十年も埋もれていた作品だが、現在はThe Best of Robert E. Howar…

ナイ神父

後藤寿庵先生(id:juangotoh)が曰く――ニャルラトホテップ、ビヤーキー、クトゥルフは主流になりつつあるなあ。ナイアーラトテップ、バイアクヘー、クトゥルー派なんだけど…そういやニャルラトホテップ派は「ナイ神父」を「にゃー神父」とか言うのか?— 後藤…

書き直したり、書き直さなかったり

ホフマン=プライスがBook of the Dead で次のような逸話を紹介している――ダーレスがウィアードテイルズに送った作品を編集長のファーンズワース=ライトが突っ返した。するとダーレスは原稿をしばらく寝かせておき、まったく同じものを何食わぬ顔で提出して…

SFスキャナー・ダークリー

翻訳家の中村融先生がブログを開設なさった。 SFスキャナー・ダークリー ごあいさつ 英米のSFや怪奇幻想文学に興味のある人にとっては必読だろう。

奈落に棲むもの

ヴルトゥームはC.A.スミスが創造した神であり、エイヘアすなわち火星の地下に住んでいる。リン=カーターがフリードリヒ=フォン=ユンツトに仮託して作った設定によればヨグ=ソトースの第三子であり、クトゥルーとハスターの弟に当たるそうだ。 カータ…

アッシュールバニパルの焔

「アッシュールバニパルの焔」といえば、「黒の碑」と並んでロバート=E=ハワードの代表的なクトゥルー神話作品だが、いま広く読まれているのは書き直されたものだ。本来の物語はTales of the Lovecraft Mythos やEl Borak and Other Desert Adventures に…

猫と髑髏

カトゥロスが登場するハワードの作品は「スカルフェイス」以外にもある。ヴァルーシアの大王カルを主役とする"The Cat and the Skull"がそれだ。ただし「スカルフェイス」のカトゥロスが"Kathulos"と綴られているのに対し、"The Cat and the Skull"のカトゥ…

カトゥロス

ラヴクラフトの「闇に囁くもの」には「ルムル=カトゥロス」への言及があるが、一体これは何者なのか。C.A.スミスは1937年4月13日付のダーレス宛書簡で「一部もしくは全体がロバート=E=ハワード由来」と説明している。いかにもハワードの作品…

トンプソン事件

ちょっと、簡単にクトゥルー神話の紹介をしてみました - Togetter とてもわかりやすい解説なのだが、C=ホール=トンプソンの「深淵の王者」にダーレスが圧力をかけたというのは厳密には正しくない。ダーレスが苦情をいうきっかけとなったのは「深淵の王者…

猛禽の影

レッドソニアといえば、アメコミや映画で活躍する女戦士だが、彼女には元ネタとなった小説が存在する。ロバート=E=ハワードの"The Shadow of the Vulture"がそれだ。この作品はマジックカーペット=マガジンの1934年1月号が初出で、現在は公有に帰し…

「ダゴン」余話

C.A.スミスが師匠のジョージ=スターリングに宛てて書いた1923年2月9日付の手紙より。 僕自身は何も書いたことがありません。ですが、僕の知り合いが送ってくれた小説がここにあります。彼はH.P.ラヴクラフトといって、ラヴマンの友人です。ポ…

何がクトゥルー神話作品なのか

クリス=ハローチャ=アーンストのA Cthulhu Mythos: Bibliography & Concordance はおびただしいクトゥルー神話作品を索引化した労作だが、アーサー=マッケンの「パンの大神」が載っていない。「パンの大神」にはノーデンスへの言及があるのだが、ハローチ…

触手なマフィア

Hardboiled Cthulhu にティム=クーレンの"Eldritch Fellas"が収録されている。 昔はよかったなあ、大勢の信者が崇めてくれたしさ――そんなことを考えながら、大いなるクトゥルーは今日もマフィア稼業に精を出していた。舎弟のツァトゥグアを引き連れて借金を…

風より生まれて

ブライアン=ラムレイに"Born of the Winds"というクトゥルー神話小説がある。1976年度の世界幻想文学大賞の候補になった作品なのだが、題名から見当がつくようにイタカの話で、しかもスティルウォーターとその周辺が舞台という直球勝負の内容だ。 "Born…

好古家の姪

バーバラ=ハンブリーに"The Adventure of the Antiquarian's Niece"という短編がある。Shadows Over Baker Street に収録されている短編で、当然ながらシャーロック=ホームズの活躍するクトゥルー神話作品だ。幽霊狩人カーナッキも出てくる。 バーンウェル…

私はぼんやりとそれをポケットに突っ込んだ……だが何ということだ、エリオット、それは実物の写真だったんだよ!

えらく長ったらしいタイトルだが、これはジョアンナ=ラスのクトゥルー神話短編の題名である。原題は"'I Had Vacantly Crumpled It Into My Pocket...But by God, Eliot, It Was a Photograph from Life!'"といって、ラヴクラフトの「ピックマンのモデル」か…

ナイトランドとデルタグリーン

「ナイトランド」創刊の報に接したとき、思い浮かべたのが「デルタグリーン」だった。というのも、私に「デルタグリーン」のことを教えてくれたのが「ナイトランド」代表のエドワード=リプセットさんだからだ。 もう何年も前のことである。当時は関連書籍の…

新宿クトゥルーミーティング

「ナイトランド」の創刊を記念し、来る4月4日に新宿のロフトプラスワンでイベントがあるそうだ。すでに予約の受付が始まっている。 時空を超越し、数多くの創作者を漆黒の深淵に引きずり込んできた「クトゥルー神話」を、様々な角度から検証し大いに語る、…

クトゥルー神話とウルトラマン

ジェイムズ=ウェイドに"Those Who Wait"というクトゥルー神話短編がある。異界へと通じる門を開いて旧支配者を復活させようという企てを阻止するべく、ミスカトニック大学のアーリン=スターンズ教授と学生たちが戦う話だ。だが教授たちの奮闘も虚しく、と…

クトゥルーと暗号

ブライアン=ステイブルフォードにThe Cthulhu Encryption というクトゥルー神話長編がある。エドガー=アラン=ポオの創造した名探偵オーギュスト=デュパンが活躍する作品だ。語り手は「モルグ街の殺人」や「盗まれた手紙」と同じくデュパンの無名の友人。…

モートンという男

ラヴクラフトのジェイムズ=F=モートン宛書簡集がアマゾンで注文できるようになっている。Letters to James F. Morton作者: H P Lovecraft,David E Schultz,Author S T Joshi出版社/メーカー: Hippocampus Press発売日: 2011/10/18メディア: ペーパーバッ…

天空の騎士

"Riders in the Sky"という短編がある。ダーレスとマーク=スコラーの合作で、ウィアードテイルズの1928年5月号に掲載された。 メソポタミアの遺跡を調査していたマーロウ博士と、彼の助手のフェントン博士が行方不明になり、後にフェントン博士の手記…

同窓会

ダレル=シュワイツァーに"Class Reunion"というクトゥルー神話短編がある。 ジェフリーはマサチューセッツ州セイレムにあるオーン=アカデミーの卒業生。同窓会があり、久々に級友たちと再会したが、どうも変な感じがする。たとえば、何年も前に自殺したは…

トートの書

シモン・マグスとクトゥルー神話 - 凡々ブログ 混沌の太鼓 - 凡々ブログ イエス=キリストによるヨグ=ソトース招喚の計画を阻止した後もシモンの冒険は続く。

混沌の太鼓

昨日の話の続きである。西暦33年の春、シモンはヨグ=ソトース招喚の計画に巻きこまれることになった。その顛末を語ったのがThe Drums of Chaos という長編だ。

シモン・マグスとクトゥルー神話

リチャード=L=ティアニーという作家が米国にいる。クトゥルー界の第三世代を代表する人物と目されがちだが、1936年生まれなので実はブライアン=ラムレイより年上だ。ラムレイもティアニーに敬意を払っているのか、『タイタス・クロウの帰還』でさり…

含み笑いするもの

ドナルド=ワンドレイに"The Chuckler"という短編がある。初出はファンタジーマガジンの1934年9月号で、Don't Dream に収録されている。 ウォルトンという男が遺言を残して亡くなった。自分の宝石はすべて娘のメアリに相続させるが、「闇の焔」という名…