新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

何がクトゥルー神話作品なのか

 クリス=ハローチャ=アーンストのA Cthulhu Mythos: Bibliography & Concordance はおびただしいクトゥルー神話作品を索引化した労作だが、アーサー=マッケンの「パンの大神」が載っていない。「パンの大神」にはノーデンスへの言及があるのだが、ハローチャ=アーンストはA Cthulhu Mythos: Bibliography & Concordance の序文で次のように述べている。

屍鬼ウェンディゴなど実在の神話の要素で、神話大系に導入されているものへの言及があるというだけでは、作品を記載するには不充分です。これらのものは神話的な要素と関連づけて言及されるか、一度は神話大系と関連づけて使われた上で首尾一貫した言及のされ方をしていなければなりません。たとえば、ラヴクラフトは2編の作品で女王ニトクリスに言及しており、そのうち1編は神話作品です。ニトクリスに対するラヴクラフトの描写は一貫性があるので、彼女の名前は神話的要素の可能性があるとして記載することにしました。他の作家(たとえばテネシー=ウィリアムズやダンセイニ卿)が、他に神話大系との関連性がない作品でニトクリスを用いても、そのような作品はこの目録には記載していません。

 つまり「パンの大神」のノーデンスはクトゥルー神話のノーデンスではないとハローチャ=アーンストは見なしているわけだ。ずいぶんと厳格な解釈をしたものである。なお『マレウス・モンストロルム』ではパンの大神はシュブ=ニグラスの化身ということになっている。