新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

触手なマフィア

 Hardboiled Cthulhu にティム=クーレンの"Eldritch Fellas"が収録されている。
 昔はよかったなあ、大勢の信者が崇めてくれたしさ――そんなことを考えながら、大いなるクトゥルーは今日もマフィア稼業に精を出していた。舎弟のツァトゥグアを引き連れて借金を取り立てたり、触手もののポルノを書いている作家に上納金を強要したり。ツァトゥグアは何を言われても相槌を打つばかりで、クトゥルーが人間をぶっ殺している最中にコーヒーを淹れて勧めたりする。どうやら彼は洋の東西を問わず、そういうキャラとして定着しつつあるようだ。組織のボスはヨグ=ソトースだが、「偉いのは俺なのに、どうしてクトゥルー神話と呼ばれるんだ」などとナイアーラトテップに愚痴をこぼしている。「ダーレスという人物が始めたことでして……」と説明するナイアーラトテップ
 バーで酒を飲んでいても、思い出すのは懐かしき良き日々のことばかり。どうにも虫の居所が悪いクトゥルーは拳銃を振り回し、チャウグナール=ファウグンを蜂の巣にしたりしている。ちなみにバーに集まっているのはシュブ=ニグラス・ハスター・イグ・ダゴンといった面々。なぜかハスターは男の娘だ。しまいに乱酔したクトゥルーアーカムの街を破壊しまくり、それを機に旧神は旧支配者を根こそぎ検挙しようとする。ヨグ=ソトースはクトゥルーを厄介払いすることにし、クトゥルーはコンクリ詰めにされてルルイエに沈められてしまった。
 見ての通りのパロディで、題名は映画『グッドフェローズ』をもじったものらしい。クーレンはミシガン州在住のホラー作家だが、もっとまじめな作品も書いている。そのひとつである「沼地を這うもの」が「ナイトランド」の創刊号に掲載される予定だ(参照)。