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主にクトゥルー神話のことなど。

黄金髑髏の呪い

 ロバート=E=ハワードに"The Curse of the Golen Skull"という短編がある。ヴァルーシアの大王カルのシリーズに属する短編で、カルが王に即位する前の出来事を扱っている。ハワードの死後何十年も埋もれていた作品だが、現在はThe Best of Robert E. Howard の1巻などで読むことができる。
 レムリアの魔道士ロタスは権勢を誇っていたが、彼を怖れた王はカルの力を借りて排除することにした。高山の頂に築かれた神殿でロタスが襲撃され、死にかけているところから物語は始まる。
 ロタスの傷口からはおびただしい血が流れ出し、もはや彼が助かる見こみはなかった。瀕死のロタスはあらゆる人間を、これから生まれて来るであろう人類すべてを呪い、暗黒の神々に祈りを捧げた。

ロタスは暗黒神の神殿にかけて、蛇族の這う跡にかけて、猿王の鉤爪にかけて、そして鉄で装丁されたシュマゴラスの書にかけて人類を呪った。

 というわけで、シュマゴラスの名前が出てくる。シュマゴラスが言及されたのはこれが史上初ということになっているが、ハワードは二度と使おうとせず、ラヴクラフトら友人たちが借用することもなかった。シュマゴラスの書(ちなみに複数形である)というのが何のことなのかも不明だ。
 ともあれ、こうしてロタスは死んだ。長い歳月が流れてレムリアは海中に没し、高山の頂がわずかな島として残るのみとなった。ロタスの肉体もとっくに朽ち果てていたが、骨だけは残っていた。いまわの際にロタスが発動させた魔法により、彼の骸骨は純金と化していたのだ。ある日、海の彼方からやってきた探検家が神殿の廃墟に足を踏み入れた……。
 作中の時間が現代に至っているので、ある意味ではカルの物語の掉尾を飾る作品ということになるのだが、その割には肝心のカルが名前しか出てこない。しかし英雄や王たちの勲はことごとく消え去り、後に残ったのは怨念と呪詛ばかりだったという結末は何ともハワードらしい。

The Best of Robert E. Howard Volume 1 : The Shadow Kingdom

The Best of Robert E. Howard Volume 1 : The Shadow Kingdom