2009-01-01から1年間の記事一覧
SS少将ワルター=シェレンベルクのニュルンベルク裁判における宣誓供述書を西イングランド大学のサイトで読むことができる。 http://www.ess.uwe.ac.uk/genocide/schellenberg.htm これによると、シェレンベルクの経歴は以下の通り。 1933年6月 SS…
ダーレスに「祖先」(The Ancestor)という短編がある。ラヴクラフトとの「合作」のひとつで、1957年にアーカムハウスから刊行されたThe Survivor and Others を初出とする。現在はThe Watchers Out of Time などの単行本で読むことができる。The Watche…
諸葛孔明の第4次北伐の時、兵站の維持に失敗した李厳が責任を孔明になすりつけようとして失脚したことは三国志演義の第101回に書いてある。李厳伝の蠔註によると、孔明は魏延・訒芝・姜維ら軍幹部と共に連名で上奏文を提出して李厳の不正を糾弾し、彼を…
ロバート=バーロウの回想記*1によると、ラヴクラフトは洗濯をこまめにする人だった。シャツの襟がしわにならないよう上手に干すコツをバーロウはラヴクラフトから教わったそうである。後にバーロウが学生となったとき、その技術は大いに役に立ったという。 …
「ハスターの帰還」についてダーレスから意見を求められたC.A.スミスは1937年4月28日付の手紙*1でたいそう丁寧に助言している。そのくだりを以下に訳出した。 「ハスターの帰還」を二度読んで、たいへん関心を覚えました。これは実に注目すべき作…
ドナルド・ワンドレイの回想によると、彼とラヴクラフトとモートンが連れ立ってアイスクリームを食べに行ったことがあったそうだ。その時、ワンドレイはアイスクリームの大食い競争に付き合わされ、彼自身は7パイント(約3.3リットル)を食べて降参した…
ラヴクラフトが猫を膝の上に乗せたまま身じろぎもせずに一晩を過ごしたという逸話は非常に有名だが、その出典がW=ポール=クックの回想記であることはあまり知られていないように思われる。そこでLovecraft Rememberedに収録されているクックの回想記から…
ローマ時代のアヴェロワーニュを舞台にした小説をC.A.スミスは書こうとしていた。その作品はついに完成せず、構想だけが残っている。 制圧されたばかりのアヴェロニア地方に駐屯しているローマ軍の将校ホラティウスは、失踪した同僚ガルビウスを捜索して…
The Youngest Vampire (Synopsis) by Clark Ashton Smith C.A.スミスが書こうとした吸血鬼の話である。結局は書かれずじまいで、ただ構想だけが残っている。 彼が買った農場には四つの墓があった。ある晩、月明かりに照らされたリンゴ園で彼は12歳くら…
ロバート=ブロックは語る。 1925年から36年までがウィアードテイルズの黄金期であり、同誌の最高の作家たちが全盛にあった時期でした。それ以前には大したことは起きていませんし、それ以降のウィアードテイルズは重要な作家を二人しか輩出していませ…
『エイボンの書』(新紀元社)の273ページより。 されど知れ、ファロールよ、何も知らしめることなかりせば われは汝を魔道の力にて苛まん イググルルの呪文あるいは 真に遺憾ながら紅の印形もて 暗黒の魔物よ、汝とわれはともにあり 万物の向かいし怪異…
ロバート=プライスがThe Azathoth Cycle の序文でアザトースの起源を考察している。 「アザトース」の結末は「未知なるカダスを夢に求めて」の中で語られているとウィル=マレーは慧眼にも推測している。「アフォラートのゼニグは凍てつく荒野のカダスに辿…
C.A.スミスがレスター=アンダーソンに宛てて書いた1933年7月20日付の手紙*1から。 「キングコング」を観ましたよ。何日か前からオーバーンでも上映しているんです。第一級の原始時代の悪夢ですね! 髑髏島を舞台にした部分にはたいへん感動させ…
クトゥルー漢字化 - 枕流亭ブログ 何がすごいといって、ここで候補に挙がっている漢字がすべて実在することだ。 http://www.mojikyo.gr.jp/gif96/046/046189.gif これなんかもクトゥルーらしさが感じられるが、本来の意味がわからん。 漢字の話題が出たつい…
C.A.スミスのゾティーク神話作品集が東京創元社から刊行されるそうだ。ゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫)作者:クラーク・アシュトン・スミス発売日: 2009/08/30メディア: 文庫 収録されている作品はすでに邦訳があるものばかりだが、一冊の本にまとめ…
中でも笑ったのは、僕が唯物論者だからサヨクだという主張。「唯物論者=サヨクだというのは常識」なんだそうだ。 ほー、それじゃあラヴクラフトもサヨクだったんだ(笑)。 知らなかったよ。 http://homepage3.nifty.com/hirorin/dema.htm 唯物論者がすべて…
武成王廟 脇侍の変遷 - 思いて学ばざれば いろいろと興味深いのだが、宋の太祖が関羽を武成王廟の合祀から外させたというのが特に印象的だ。関羽といえども、常に崇敬されていたわけではないということか。 神様になった関羽は『西遊記』にも端役で出演して…
Nameless Placesは1975年にアーカムハウスから刊行されたアンソロジーで、A.A.アタナシオの"Glimpses"やリン=カーターの「時代より」といったクトゥルー神話作品が収録されているが、ここではデイヴィッド=ドレイクの"Awakening"を紹介させていた…
ロバート=ブロックは1994年9月23日に亡くなったが、当時のことをラムジー=キャンベルが振り返っている。 ボブ=ブロックと僕の共通の知り合いから聞いたのですが、自分の死期が迫っていることを知ったボブは、どうか訪ねてきてほしい(住んでいるの…
Someone in the Darkはダーレスの怪奇短編集であり、1932年から41年にかけて彼が発表した作品の中で特に優れた16編が収録されている。元々はアーカムハウスから刊行されたのだが、これは今や数百ないし1000ドルの値がついているので、私にはちょ…
ロバート=プライスによるThe Nyarlathotep Cycle の序文より。 H.P.ラヴクラフトの創造した神々の中で、ナイアーラトテップはもっとも人間を嘲弄するかのような謎めいた存在である。「未知なるカダスを夢に求めて」でナイアーラトテップは千の貌を持つ…
The House of the Worm はゲイリー=メイヤースのクトゥルー神話作品集である。1975年にアーカムハウスから刊行され、幻夢境を舞台にした11の短編が収録されている。ダーレスの没後に刊行された本だが、メイヤースの小説を本にして出版することを決定…
Cthulhu 2000 にはエスター=M=フリーズナーの"Love's Eldritch Ichor"が収録されている。eldritchもichorも耳慣れないが、クトゥルー神話作品においては頻出する単語だ。この題名を直訳すれば「愛の不吉なる膿漿」といったところか。割と好きな作品なので…
ラヴクラフトとダーレスの合作『暗黒の儀式』は実際にはほぼすべてダーレスが書いているが、その基となったラヴクラフトの断章は存在する。その断章は『クトゥルーの窖』(Crypt of Cthulhu)の第6号に掲載されているが、ケヴィン=オブライエンがロバート…
ラヴクラフトにいわせると、人生はグリースを塗った斜面のようなものだそうだ。私たちはその斜面を滑り落ちていきながら、速度を少しでも遅くするため手がかりに掴まろうとするが、そんなことは無理なのだという話だった。 ロバート=バーロウの覚書*1に出て…
Cthulhuは人間には発音できない名前だが、Dunwichは人間が発音するためにある名前なので、正しい読み方というものがあるはずだ。ダニッチと読むのが正しいのか、それともダンウィッチと読むべきなのか、ニュースグループで議論されていたことがある。 Google…
ジェイムズ=ウェイドのクトゥルー神話小説で邦訳されているのは「深きものども」*1だけだが、彼は他にもいくつか神話作品を書いており、その中でも特に優れていると私が思うのは「エリカ=ツァンの沈黙」(The Silence of Erika Zann)だ。サンフランシスコ…
前回に引き続き、ニール=ゲイマンの話である。ゲイマンには「我はクトゥルー」と題する掌編があり、気前のいいことに公式サイトで無償公開してくれている。 Neil Gaiman | Cool Stuff | Short Stories | I Cthulhu 題名の通り、大いなるクトゥルーを主人公…
cthulhu.hatenablog.jp これがショゴス丼か! ショゴスビールというものもあるが、こちらはニール=ゲイマンの小説に出てくる架空の飲み物だ。1998年に発表された"Shoggoth's Old Peculiar"がその小説である。題名になっているShoggoth's Old Peculiarは…
ラヴクラフトがロバート=バーロウに宛てて書いた1932年3月21日付の手紙*1ではチャールズ=フォートのことが話題になっている。 チャールズ=フォートから手紙をもらったとのこと、おめでとうございます! 彼はまことに偏った人物であり、バランス感…