新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

幼い吸血姫

The Youngest Vampire (Synopsis) by Clark Ashton Smith
 C.A.スミスが書こうとした吸血鬼の話である。結局は書かれずじまいで、ただ構想だけが残っている。

 彼が買った農場には四つの墓があった。ある晩、月明かりに照らされたリンゴ園で彼は12歳くらいの美少女と出会う。少女はロザリンドと名乗った。やがて彼は身体の衰弱を覚え、自分の喉に小さな傷があるのを何度か発見した。ある夜ふと目覚めると、寝室にロザリンドがいた。四つの墓石のひとつにも、ロザリンドという名前が刻まれている。少女は吸血鬼だったのだ。彼は四つの墓を暴いて吸血鬼を次々に屠り、最後の力を振り絞ってロザリンドの胸に杭を打ちこんだ。息絶えた彼が残した書置きには、自分の亡骸に杭を打ってほしいと書いてあったが、誰も取り合おうとはしなかった。

 いかにもスミスらしい結末である。知り合いにこの話をしてみたのだが、「自分ならロザリンドと一緒に楽しく暮らす」という反応の多いこと多いこと。