新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

天空の騎士

"Riders in the Sky"という短編がある。ダーレスとマーク=スコラーの合作で、ウィアードテイルズの1928年5月号に掲載された。 メソポタミアの遺跡を調査していたマーロウ博士と、彼の助手のフェントン博士が行方不明になり、後にフェントン博士の手記…

同窓会

ダレル=シュワイツァーに"Class Reunion"というクトゥルー神話短編がある。 ジェフリーはマサチューセッツ州セイレムにあるオーン=アカデミーの卒業生。同窓会があり、久々に級友たちと再会したが、どうも変な感じがする。たとえば、何年も前に自殺したは…

トートの書

シモン・マグスとクトゥルー神話 - 凡々ブログ 混沌の太鼓 - 凡々ブログ イエス=キリストによるヨグ=ソトース招喚の計画を阻止した後もシモンの冒険は続く。

混沌の太鼓

昨日の話の続きである。西暦33年の春、シモンはヨグ=ソトース招喚の計画に巻きこまれることになった。その顛末を語ったのがThe Drums of Chaos という長編だ。

シモン・マグスとクトゥルー神話

リチャード=L=ティアニーという作家が米国にいる。クトゥルー界の第三世代を代表する人物と目されがちだが、1936年生まれなので実はブライアン=ラムレイより年上だ。ラムレイもティアニーに敬意を払っているのか、『タイタス・クロウの帰還』でさり…

含み笑いするもの

ドナルド=ワンドレイに"The Chuckler"という短編がある。初出はファンタジーマガジンの1934年9月号で、Don't Dream に収録されている。 ウォルトンという男が遺言を残して亡くなった。自分の宝石はすべて娘のメアリに相続させるが、「闇の焔」という名…

光と闇の果てしないバトル

C.J.ヘンダースンの新ザルナック・サーガの掉尾を飾るのが"The Door"だ。"To Cast out Fear"ではルグラース警視正とザルナック博士が共闘したが、今度はテディー=ロンドン(参照)が出てくる。

我らの望む苦痛

C.J.ヘンダースンの"The Pain We Desire"もアントン=ザルナックを主役とする短編だ。この作品では、ザルナック博士はニューヨークからサンフランシスコに引っ越している。それまでザルナックの住所はニューヨークだったりサンフランシスコだったり設定…

愛は勝つ

昨日の記事でC.J.ヘンダースンの"Admission of Weakness"を紹介したが、その続編に当たるのが"To Cast out Fear"だ。この題名は新約聖書の「ヨハネの第一の手紙」4章18節にある「愛に恐怖はない。完全な愛は恐怖を打ち払うものである」という言葉に因…

閻魔対オカルト探偵

リン=カーターが創造したオカルト探偵アントン=ザルナックの物語を書き継いだ作家はロバート=プライスだけでなく、C.J.ヘンダースンもその一人だ。ただしヘンダースンの作品はプライスのそれと世界観を共有しているわけではなく、言うなればパラレル…

パートリッジヴィル家の犬

昨日に引き続き、もうひとつティンダロスの猟犬の話をさせていただこう。ピーター=キャノンに"The Hound of the Partridgevilles"という短編がある。「ティンダロスの猟犬」の後日談だが、題名はコナン=ドイルの「バスカヴィル家の犬」のパロディだ。 パー…

ジャガーノート

The Tindalos Cycle にC.J.ヘンダースンの"Juggernaut"が収録されている。2000年に発表された短編で、主役を務めるのはオカルト探偵のテディー=ロンドンだ。

ナイトランド予約注文受付開始

先週の記事で紹介した『ナイトランド』が予約注文できるようになった。 http://www.trident.ne.jp/j/NL/faq/faq-02.html PayPalショッピングカートが利用できるようになっている。クレジットカードを持っているだけで注文できるので便利だ。 『ナイトランド…

黒堂麻薬戦争顛末記

アントン=ザルナックというキャラクターをカーター本人はあまり発展させなかった。だがカーターの死後に他の作家たちがザルナック博士の物語を書き継ぎ、彼らの作品が一冊の本にまとまっている。すなわちLin Carter's Anton Zarnak Supernatural Sleuth で…

夜に死す

リン=カーターに"Dead of Night"という短編がある。オカルト探偵アントン=ザルナックを主役とする小説のひとつで、初出はCrypt of Cthulhu の54号(1988年復活祭号)だ。この作品には、ヘンリー=カットナーの創造した邪神ズシャコンが出てくる。 ド…

オカルト探偵ザルナック

ブライアン=ラムレイがタイタス=クロウを創造したように、リン=カーターはアントン=ザルナックというオカルト探偵を創造した。ザルナックはミスカトニック大学など四つの大学で博士号を取得したという人物。現在はリバーストリートに住んでいるが、これ…

黒の書の名前

ロバート=E=ハワードの"Names in the Black Book"は、"Lord of the Dead"の後日談である。掲載される予定だった雑誌が廃刊になってしまった"Lord of the Dead"と違って、こちらはスーパーディテクティブ=ストーリーズの1934年5月号に載った。そのた…

死者の王

ロバート=E=ハワードに"Lord of the Dead"という短編がある。スティーヴ=ハリソンを主役とするシリーズのひとつで、ストレンジディテクティブ=ストーリーズの1934年3月号に掲載される予定だったが、同誌は2月号で廃刊になってしまった。そのため…

僕の彼女には鱗がある

Dead But Dreaming 2 にダレル=シュワイツァーの"Innsmouth Idyll"が収録されている。 主人公はティミーという名の少年。インスマスに引っ越してきたばかりで、インターネットはおろかテレビすらない環境にうんざりしている。だがへジーという少女と知り合…

若舞梨花、如飄瑞雪

三国志演義の英訳版を無償公開しているサイトがある。 TK 1925年に翻訳されたものなので、テキストは公有に帰しているはずだ。訳者のブレウィット=テイラーについては、略歴をブリストル大学のサイトで読むことができる。 Bristol University - History…

災厄の歯

ロバート=E=ハワードに"The Tomb's Secret"という短編があり、ウィキソースで無償公開されている。 en.wikisource.org スティーヴ=ハリソンが主役の作品で、"Teeth of Doom"という題名でも知られる。初出はストレンジディテクティブ=ストーリーズの19…

ナイトランド

今春、トライデント・ハウスから新しい季刊誌が刊行される。 http://www.trident.ne.jp/j/NL/mag/2012.html クトゥルー神話ファンにとって見逃せないのは、ラムジー=キャンベルの「コールド・プリント」だろう。イゴーロナクが出てくる作品である。それ以外…

墓場の鼠

一昨日*1に続き、ロバート=E=ハワードの創造したダーティヒーロー・スティーヴ=ハリソンの話である。ハリソンを主役とする作品のひとつに"Graveyard Rats"があり、これまた現在では公有に帰しているのでウィキソースで読める。初出はスリリング=ミステ…

不気味な仕立屋

ロバート=ブロックに"The Weird Tailor"という短編がある。 エリック=コンラッドは中年の仕立屋。量販店に押されて、店は寂れる一方だ。ドイツから亡命してきたアンナという若い奥さんがいるのだが、仕事がうまく行かないエリックは彼女に暴力を振るってば…

黄金の牙

スティーヴ=ハリソンというダーティヒーローが活躍する作品をロバート=E=ハワードはいくつか書いているが、私の知る限り邦訳は全然ない。興味を覚える人がいるかもしれないので、そのシリーズに属する"Fangs of Gold"を紹介させていただこう。初出はスト…