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主にクトゥルー神話のことなど。

オカルト探偵ザルナック

 ブライアン=ラムレイがタイタス=クロウを創造したように、リン=カーターはアントン=ザルナックというオカルト探偵を創造した。ザルナックはミスカトニック大学など四つの大学で博士号を取得したという人物。現在はリバーストリートに住んでいるが、これはスティーヴ=ハリソンの住所でもある。また、シンという名の従僕がザルナックに仕えているということになっている。
 The Xothic Legend Cycle に収録されている"Perchance to Dream"は、ザルナック博士が主役の物語だ。ウィンフィールドという金持ちの青年が海底都市の悪夢に悩まされており、知人の勧めに従ってザルナックに相談しに行く。ウィンフィールドが祖父から相続したイソグサの石像が原因であることを突き止めたザルナックは旧神の印を用いて儀式を執り行い、像を無事に消滅させる。ウィンフィールドがルルイエの夢を見ることはなくなって、めでたしめでたし。これだけの話なのだが、クトゥルーの息子イソグサの外見が描写されている点は特筆に値するだろう。

二本足で直立しているが、脚は両生類のものに似ている。手には水掻きがあり、指先には吸盤がある。のたうつ触手が頭部を覆っており、爛々と輝く眼がその中からひとつだけ覗いている。

 カーターは上記のように述べており、これは『マレウス・モンストロルム』でも引用されている。ゾス=オムモグがトカゲに似ているのに対して、イソグサはカエルめいた姿だ。
 またジュール=ド=グランダンはザルナックの友人ということになっており、彼がザルナックの家を訪ねてくる場面が"Perchance to Dream"にはある。クトゥルー神話でシーベリー=クインからの借用とは珍しい。

The Xothic Legend Cycle: The Complete Mythos Fiction of Lin Carter (Fiction Series)

The Xothic Legend Cycle: The Complete Mythos Fiction of Lin Carter (Fiction Series)