新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

2014-01-01から1年間の記事一覧

モーテルの殺人

http://www.trident.ne.jp/j/ ナイトランドの無期休刊は残念な出来事だったが、必ず将来につながる成果が残ったと思う。バーラス・スラッター・ミークルといった作家を我が国の読者に知らしめたことは同誌の功績のひとつだろう。 ブライアン=M=サモンズも…

ジョン=ギブソンなる人物の陳述

前回の記事でロバート=プライスの"The Strange Fate of Alonzo Typer"を紹介したが、ブライアン=ラムレイも「アロンソ=タイパーの日記」の後日談を書いている。ウィリアム=ラムレイの作品の続きをブライアン=ラムレイが書いたことになるが、二人のラム…

アロンソ=タイパーの奇妙な運命

昨日に続いてロバート=プライスのクトゥルー神話小説の話。昨日は「インスマスを覆う影」のスピンオフだったが、今度は「アロンソ=タイパーの日記」の続編である。題名を"The Strange Fate of Alonzo Typer"という。 "The Strange Fate of Alonzo Typer"で…

ザドック=アレンの転生

ロバート=プライスに"The Transition of Zadok Allen"という短編がある。題名からわかるようにラヴクラフトの「インスマスを覆う影」のスピンオフで、酔いどれの老人ザドック=アレンの運命が語られている。 1930年の秋、イプスウィッチの漁師の網に金…

暗黒の嗤い

ラムジー=キャンベルにThe Grin of the Dark というクトゥルー神話長編がある。2008年度の英国幻想文学大賞を受賞した作品だ。私が買ったペーパーバック版の表紙には「あなたが目覚めているうちから悪夢を見させる術をキャンベルは心得ている」というロ…

木蓮林の家

Zombies from the Pulps!: Twenty Classic Stories of the Walking Dead というアンソロジーが今年の2月に刊行された。Zombies from the Pulps!: Twenty Classic Stories of the Walking Dead作者:Shanks, Jeffrey発売日: 2014/02/12メディア: ペーパーバッ…

スパゲッティを嫌う男

"Spaghetti"というクトゥルー神話中編をブライアン=ラムレイが1985年に発表している。神話作品に麺類が出てくる時点で嫌な予感がするが、とりあえず読んでみることにした。 物語の舞台となるのは1977年のロンドン、語り手は英陸軍の退役少佐だ。階…

取り替え子

昨年、Fearie Tales: Stories of the Grimm and Gruesome というアンソロジーが出た。題名からわかるように、グリム童話をモチーフにした恐怖小説のアンソロジーだ。編者は世界幻想文学大賞を3度も獲得したスティーヴン=ジョーンズ、表紙絵と挿絵は映画『…

イブ=ツトゥルを崇めよ、選択は無意味だ

ジョン=タインズといえばゲーム界の大御所だが、彼がブライアン=ラムレイへのオマージュとして書いたクトゥルー神話短編"The Nullity of Choice"がSingers of Strange Songs に収録されている。イブ=ツトゥルを崇拝する男による猟奇殺人を描いた作品だ。 …

深きものどもの幼形成熟

深きものどもの血を引く人間が歳をとると、インスマス面と呼ばれる独特の容貌を呈することが知られている。フレッド=ラブナウ博士によれば、これは決して病的な現象ではなく、むしろ深きものどもの生活環の一部と見なすべきだそうだ。 ラヴクラフトの「イン…

リッサの鉄棺

リッサの鉄棺というのは人間を鉄の棺に閉じこめ、蓋を押し下げることによって圧死させる装置なのだが、この処刑器具を題材にした短編をダーレスが書いている。そのものずばり"The Coffin of Lissa"という題名で、ウィアードテイルズの1926年10月号が初…

レムリアにおけるシュブ=ニグラス信仰

houseofthenecromancer.blogspot.jp Zaronoという人のブログ。この絵はシュブ=ニグラスを描いたものなのだが、添えてある話が興味深い。 かつてレムリアの地ではシュブ=ニグラスが崇拝されており、森にはシュブ=ニグラスの落とし子が棲んでいた。信仰の見…

アーカムハウスの元編集長が死去

ピーター=ルーバーが3月6日に亡くなったそうだ。ジョージ=バンダーバーグが追悼文を書いている。 R.I.P. Peter Ruber (1940-2014) | The Batteredbox's Weblog ルーバーはジェイムズ=ターナーの後釜としてアーカムハウスの編集長を務めた人物。若い頃は…

「風に乗りて歩むもの」余話

ラヴクラフトがダーレスに宛てて書いた1931年7月13日付の手紙から。 お送りいただいた作品は三つとも非常に興味深く拝見いたしました。もっとも気に入ったのは「風に乗りて歩むもの」です。最初の原稿もお見事でしたが、書き直したものはますますよく…

スプリングフィールドが語るダーレス

リック・スプリングフィールドが小説家デビュー! - シネマトゥデイ リック=スプリングフィールドが小説を書いたというのはしばらく前から話題になっていたが、そのことでプレーン=ディーラー紙が彼にインタビューしている。自分に影響を及ぼした作家とし…

九尾の狐とクトゥルー神話

フレデリック=J=メイヤーの詩から引用する。 溌剌たる乙女は誘う 紅玉髄の屠場には人の心臓 魂と肉体と 指は苦痛の如く疾く 暁は静謐に 骸は虚ろに 噴き出るは紅 土に塗れて真珠の如く 人化の術は成就せり KuMiHo - Zhar Liturgy #4 by Frederick J. Maye…

祭壇と蠍

ロバート=E=ハワードに"The Altar and the Scorpion"という掌編がある。ヴァルーシアの大王カルが主役のシリーズに属する作品だ。 廃墟と化しかけている神殿で、一人の少年が祭壇の前に跪いているところから物語は始まる。祭壇の上に安置されているのは巨…

シンクロニシティとか何とか

ブライアン=ラムレイに"Synchronicity or Something"という短編がある。1980年代に書かれた作品で、クトゥルー神話TRPGが絡んでくる点が興味深い。たぶんクトゥルー神話作品の範疇に入るだろうと思うのだが、あるいはメタ神話作品と呼ぶべきかもし…

君が邪神を見るとき、邪神も君を見ている

ブライアン=ラムレイの初期の作品に"Recognition"というクトゥルー神話短編がある。1977年、ラムレイがまだ英陸軍の准尉だった頃に発表された作品で、1981年に発表された。 マリオット卿が新しく買った地所は呪われているという噂だった。転売する…