新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

レムリアにおけるシュブ=ニグラス信仰

houseofthenecromancer.blogspot.jp
 Zaronoという人のブログ。この絵はシュブ=ニグラスを描いたものなのだが、添えてある話が興味深い。
 かつてレムリアの地ではシュブ=ニグラスが崇拝されており、森にはシュブ=ニグラスの落とし子が棲んでいた。信仰の見返りとしてレムリアの民は豊作を約束されていたので、彼らは大いに栄えていた。
 しかし最強の戦闘民族であるピクトがレムリアに到来し、戦争が始まった。シュブ=ニグラスの落とし子がレムリアの獣や人に産ませた怪物も戦いに参加したが、ことごとく斃されてしまった。当時ピクトの魔術師はコスの印を知っており、その印を用いて鍛えた鉄は異界のものどもにとって毒となったからである。
 そこでレムリアの神官たちはシュブ=ニグラスに助けを乞うことにした。彼らは2週間で1000人の乙女を生贄とし、その血潮が地に満ちあふれるとシュブ=ニグラスが降臨した。シュブ=ニグラスはたいそう美しい姿をしていたので、若き侍祭たちは己の眼球をえぐりとったという。この世で最後に見るものが女神の美しさであることを望んだからである――この場面がイラストとして描かれているわけだ。シュブ=ニグラスがパンツをはいているのかという突っこみは措こう。
 シュブ=ニグラスはドール招喚の呪文を大神官に授け、彼以外の神官や侍祭をすべて貢物として連れ去った。大神官は独りピクトの陣営を訪れて呪文を唱え、時空を超えて現れたドールがピクトの戦士たちを殺し尽くした。しかしドールの餓えはその程度では収まらなかったのでレムリアの生けとし生けるものを貪り尽くし、喰らうものが何もなくなったとき帰っていった。なおドールの住処はン=カイの遥か下にあるそうだが、そこは幻夢境やヤディスなど他の世界の地底とつながった一種の超空間になっている模様だ。
 こうしてレムリアは滅び、無人の地と化した。長い歳月の末に人間が再びレムリアに住み着き、廃墟の上に新しい文明を築いたのだが、その人々は賢明にもシュブ=ニグラスの神殿を封印した。そしてレムリアがとうとう海中に没したとき、恐るべきドール招喚の呪文は永遠に失われたということである。
 ――という話なのだが、ドールがシュブ=ニグラスの眷属というのは明らかにリン=カーターの設定だ。ドールは最終兵器のようなもので、自陣営にも壊滅的な損害をもたらすわけだ。豊穣の女神でありながら結構クールな性格をしているシュブ=ニグラスはある意味ハスターの奥さんにふさわしいと思うのだが、この辺にもカーターの解釈が反映されているようだ。つまり彼の影響はあちこちに現れているのだった。