新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

アロンソ=タイパーの奇妙な運命

 昨日に続いてロバート=プライスのクトゥルー神話小説の話。昨日は「インスマスを覆う影」のスピンオフだったが、今度は「アロンソタイパーの日記」の続編である。題名を"The Strange Fate of Alonzo Typer"という。
 "The Strange Fate of Alonzo Typer"では、ヴァン=デル=ハイル邸の地下室に引きずりこまれたタイパーのその後が彼自身の一人称で語られているが、その言葉はエドガー=ダウリングなる人物がアカシャ年代記から読み取って記述したものということになっている。タイパーは地下室を経由して禁断の都イアン=ホーに辿りつき、幾十もの壺を発見した。壺の中にはヴァン=デル=ハイル一族の魂が封じこめられ、己の罪を償わされている。タイパーは壺を破壊して魂を逃すが、まだ封印されていない壺がひとつだけ後に残った。その壺はタイパー自身のために用意されたものだった。

私もヴァン=デル=ハイル一族の末裔である。だが仮にそうでなかったとしても、私には重大な責任があるのだ。私は忌まわしきものを探求するのに生涯を費やしてきたが、探し求めていたものをじきに得られるのではないか。

 そこまで記述したところでダウリング師は心臓発作に見舞われた。タイパー本人の日記が発見されたのは、それから2年後のことである。その後、物好きな人たちが心霊調査協会の本部を訪れては、タイパー肖像画が奇怪な緑色に発光しているのを見たと主張することがあったそうだ。
 というわけで現在ヴァン=デル=ハイルの連中は地上をうろついているらしいのだが、一方タイパーはイアン=ホーに囚われの身となってしまった。何だか気の毒な話だが、プライス博士のこの作品はごく短いもので、タイパーの運命をとりあえず明らかにしてみただけという感じがする。「アロンソタイパーの日記」の続編として書かれた作品としては他にブライアン=ラムレイの"The Statement of One John Gibson"があり、そちらのほうが小説としては中身を伴っているといえるだろう。