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木蓮林の家

 Zombies from the Pulps!: Twenty Classic Stories of the Walking Dead というアンソロジーが今年の2月に刊行された。

Zombies from the Pulps!: Twenty Classic Stories of the Walking Dead

Zombies from the Pulps!: Twenty Classic Stories of the Walking Dead

  • 作者:Shanks, Jeffrey
  • 発売日: 2014/02/12
  • メディア: ペーパーバック
 題名と表紙絵から察しがつくように、ゾンビの出てくるパルプ小説ばかり集めた本だ。ラヴクラフトの「死体蘇生者ハーバート=ウェスト」やロバート=E=ハワードの「鳩は地獄から来る」といった有名な作品と並んで、ダーレスとマーク=スコラーの合作"The House in the Magnolias"が収録されている。「木蓮林の家」とはロマンチックな題名だが、中身はもちろんゾンビ小説だ。
 主人公はジョン=スチュアードというシカゴ在住の画家。ニューオーリンズへやってきた彼は、モクレンの林に囲まれた屋敷を郊外で見かけ、ぜひとも画題にしたいと考える。その屋敷を訪問したジョンを出迎えたのは、ロザムンダ=マーシナと名乗る美女だった。屋敷と農園の所有者はアビーという老婦人で、ロザムンダは彼女の姪だという。二人はハイチからニューオーリンズに移住してきたのだった。
 ジョンは屋敷に泊めてもらって絵を描きはじめるが、夜中に黒人たちが畑仕事をしているのを目撃する。彼らは死者だった。アビーは墓場から死体を盗んできては魔術でゾンビにし、奴隷として働かせているのだとロザムンダは告白する。
 ロザムンダとジョンは呪いを破るためゾンビに塩を食べさせる。解放されたゾンビたちは墓に帰ろうと走って行った。アビーはゾンビに殺され、ロザムンダとジョンは炎上する屋敷を後にする。翌日、墓地で黒人の死体がいくつも発見されたと新聞が報じた。墓は素手で掘り返され、まるで死体が中に戻ろうとしたかのようだった。
 "The House in the Magnolias"の初出はストレンジテイルズの1932年6月号。ダーレスとスコラーが1931年の夏に量産したパルプ小説のひとつだろう。ラヴクラフトはこの作品を「とてもよく書けている」と褒めたのだが、同時に「この設定だとヒロインも黒人の血を引いていることになりますね」と指摘している。ヒロインがアフリカ系であることを気にするあたり、悪い意味でラヴクラフトらしい。