新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

深きものどもの幼形成熟

 深きものどもの血を引く人間が歳をとると、インスマス面と呼ばれる独特の容貌を呈することが知られている。フレッド=ラブナウ博士によれば、これは決して病的な現象ではなく、むしろ深きものどもの生活環の一部と見なすべきだそうだ。

 ラヴクラフトの「インスマスを覆う影」を根拠とするだけでも、水陸両棲の深きものどもであることは生物的にも文化的にも進化上の利点があるように見受けられる。おそらくは後者のほうがより重要だろう。人生の最初の20年か30年を人間として過ごせば、人間社会について学び、ヒトという種に関する情報を収集することができる。人間がどこに住み、どこで漁をするかを知っておけば、深きものども自身が暮らし集うべき場所について有益な知見を得られるだろう。深きものどもは特定の集団や地域の人間と交流を持つことが知られているが、接触する対象を選ぶ際には何世紀もかけて入念に偵察を行うものと思われる。

Necronomcion Convention talk – Biology of the Old Ones, Part 23 – Metamorphosis of the Deep Ones | Lovecraftian Science

 変貌せずに人間の姿を保つ深きものどももいることがブライアン=ラムレイの「けがれ」で語られているが、これは幼形成熟ということになるだろう。幼形成熟する神話生物は深きものどもだけではなく、ベア&モネットの"Mongoose"によればティンダロスの猟犬にも幼形成熟個体が存在する(参照)。
 なお"Mongoose"は「ブージャム」と同じ世界観で書かれた作品だ。邦訳はないが、原文はネット上で無償公開されている。*1非常におもしろい作品なので、ご興味のある方には一読をお勧めする。

ナイトランド 5号 (春2013)

ナイトランド 5号 (春2013)

  • 作者: 朝松健,ローレル・ハルバニイ,ブライアン・M・サモンズ,グリン・バーラス,エリザベス・ベ,サラ・モネット,アンジェラ・スラッタ,ロバート・ブロック,石神茉莉,小松左京,山野辺若,YOUCHAN,?木桜子,佐竹美保,藤原ヨウコウ,松山ゆう,上院芭郎,槻城ゆう子
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  • 発売日: 2013
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