新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

ヨシ対キング

 世の中には暇な人がいるもので、S.T.ヨシがスティーヴン=キングを評した言葉がまとめてあったりする。もっとも、そんなものを読みたがる私は輪をかけた暇人ということになるかもしれない。さて、ヨシがどんなことを書いているのかというと――

キングが成功を収めた秘訣は、率直にいってしまえば、彼があまり優秀な作家ではないということだ。彼は着想は陳腐であり、その源はもっぱら映画やテレビ番組やコミックである。若い頃はそういったものに耽溺していたとキングはおおっぴらに認めているのだ(彼がホラーのことを熟慮した結果については『死の舞踏』を参照)。彼の文章は平板であり、信じがたく許しがたいほど凡庸である。キングの小説は無関係な駄弁や無価値な挿話や、型にはまった陳腐な登場人物をめちゃくちゃに混ぜ合わせた代物だ。かくも低級な作品であるからこそ、多くの批評家は(正当にも)キングを酷評するし、より文学的に高等な作品を見ようともしなければ理解することもできない読者層に彼の作品は好評を博しているのである。

http://www.stephenking.com/forums/showthread.php/18671-Stephen-King-versus-S-T-Joshi

 陳腐かつ低級であるがゆえに、凡愚の大衆にもてはやされる。ベストセラーを腐す言葉としては珍しくないが、それにしても散々な言われようだ。キングはヨシに認められるには作品が売れすぎたのかもしれない。
 世界一のラヴクラフト研究家として知られるヨシだが、彼が自分の好き嫌いをはっきり表明する人であることは前にも紹介した。*1上に引用したのは2009年の文章だそうだが、今も昔も彼は変わっていないようだ。神を討ち、王を倒すことを己の使命と心得るヨシ。白状すると、私はそんな彼のことが嫌いではない。

Junk Fiction (English Edition)

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