新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

オークディーンの夜曲

 ブライアン=ラムレイの"The Horror at Oakdeene"を4年前に紹介したが(参照)、この話の後日談をジョゼフ=S=パルヴァーが書いている。"The Night Music of Oakdeene"という短編で、彼の作品集であるBlood Will Have Its Season に収録されているが、ネット上で読むこともできる。
FICTION BY JOSEPH S. PULVER, SR.
 "The Horror at Oakdeene"から40年ほど後のオークディーン療養所が"The Night Music of Oakdeene"の舞台だ。"The Horror at Oakdeene"の主役であり、結末で発狂したマーティン=スペルマンも療養所の患者として登場する。ちなみにパルヴァーはラムレイの許可をきちんと得ているそうだ。
 "The Horror at Oakdeene"で紙片に書き写された第6サスラッタが誰にも気づかれないまま残っており、軽率な看護師がそれを手に入れたことで40年前の惨劇が繰り返される。第6サスラッタの詠唱は肉声である必要はなく、録音された音声でも同等の効果を発揮するということになっているのが目新しい。
 またイブ=ツトゥルがにやりと笑う場面があるのだが、ラムレイの作品でイブ=ツトゥルが何らかの表情を見せたことはないはずなので、これはパルヴァーの独創であるように思われる。どろどろに腐り爛れた顔でどう笑うのかは定かでないが、なかなか慄然とした感じがしてよい。
 作者のパルヴァーは近年クトゥルー神話作品を精力的に発表している人。『エイボンの書』(新紀元社)に収録された彼の作品をお読みになった方もおられるだろう。「ナイトランド」の1号に掲載されたマット=カーペンターの書評ではパルヴァーの作風が「どこを取っても詩的で、容赦ないリズムと暴力的なイメージを垣間見せる」と評されている。

Blood Will Have Its Season

Blood Will Have Its Season

クトゥルフ神話カルトブック エイボンの書

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