ブライアン=ラムレイのThe House of Cthulhu は超古代のティームドラ大陸を舞台にした短編集であり、題名からわかるようにクトゥルー神話大系に属している。C.A.スミスが創造したポセイドニスの大魔術師マルグリスにラムレイは献辞を捧げており、彼がティームドラ神話の執筆に際してスミスを強く意識したことが窺える。
ティームドラの大魔術師テフ=アツトの著した超古代文書がスルツェイ島出現の際に発見された。それを碩学セルレッド=グストーが英語に翻訳し、彼から原稿を渡されたラムレイが編集の上で発表したのがThe House of Cthulhu だということになっている。
その後グストーは失踪したが、実はバイアクヘーの背に乗って地上を去ったのだとラムレイは本書の序文で述べている。グストーは常に孤高の人であり、20世紀の喧騒の中にあっては安らぎを見出すことがなかった。なればこそ星々の世界へと旅立っていったのだろう――セルレッド=グストー(Thelred Gustau)の綴りを並べ替えればオーガスト=ダーレス(August Derleth)になる。そう、孤高の碩学グストーとはダーレスのことなのだ。そしてラムレイは高らかに宣言する。
「私こそが彼の遺産の継承者である」
「あの人が始めたことは私が完成させる」
ティームドラ神話はラヴクラフト・ダーレス・スミスに対するラムレイの頌歌でもあるのだ。
The House of Cthulhu: Tales of the Primal Land Vol. 1
- 作者:Lumley, Brian
- 発売日: 2007/04/03
- メディア: ペーパーバック