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ユニコーン伝説の真相

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 チャールズ=ストロスのクトゥルー神話中編"Equoid"が今年度のヒューゴー賞を受賞した。ストロスは以前「コンクリート・ジャングル」でも受賞しているので、神話作品で二度もヒューゴー賞を獲ったことになる。
 "Equoid"は「コンクリート・ジャングル」と同じく〈ランドリー〉シリーズに属している。作中の時間では同シリーズ3冊目のThe Fuller Memorandum よりも少し前に位置し、原文がTor.comで無償公開されている。
Equoid | Tor.com
 〈ランドリー〉は英国政府が旧支配者の眷属に対抗するために設立した秘密機関、主人公のボブ=ハワードはその諜報員だ。『残虐行為記録保管所』では新米だった彼も"Equoid"ではすでにかなり経験を積み、モオことドミニク=オブライエン博士と結婚しているが、異界の魔物や暗黒教団との死闘が続く中で夫婦ともども心身をすり減らす日々だ。
 "Equoid"の見所は、若きロバート=ブロックに宛ててラヴクラフトが書いたとされる架空の手紙が長々と引用されていることだろう。「一角獣の話を書きたいですって? おやめなさい、君はやつらの正体を知らないのです」といって、ラヴクラフトはブロックに自らの怖ろしい体験を打ち明ける。ラヴクラフトによると一角獣は異界の妖魔であり、その正体はシュブ=ニグラスだそうだ。
 ラヴクラフトが14歳の時、ヘティという一つ年下の美少女を見初めた。二人は親しくなるが、ヘティは一角獣に精神を操られていたのだ。ヘティにつれられて厩舎に入ったラヴクラフトは、彼女がシュブ=ニグラスの触手で陵辱されるところを目撃してしまうのだった。ラヴクラフトを登場人物とするクトゥルー神話小説は多々あれど、ここまで悲惨な目に遭う例はちょっと珍しいかもしれない。
 ラヴクラフトはシュブ=ニグラスにランプを投げつけ、炎上する厩舎から命からがら脱出したが、ショックが原因で寝こんでしまう。若い頃の彼が引きこもりだったのは、その事件で受けた心の傷から回復していなかったからなのだった。ラヴクラフトが最終的に立ち直れたのはソニア=グリーンのおかげであるとのこと。ちなみにダーレスも名前だけ出てくる。
 そして月日は流れて現在、またしても現れた一角獣に対処するために我らがボブ=ハワードが奔走する。一角獣を軍事利用しようという狂った計画が国防省では定期的に蒸し返され、そのたびに却下されているのだそうだが、かなりブラックユーモアの効いた設定だと思う。
 無料で読める作品だからといって、ストロスは決して手を抜いていない。だが今回はいつにも増して話がえげつなかった。〈ランドリー〉の物語は映像化するといいのではないかと私は思っていたのだが、これでは成年指定を免れそうにない。

残虐行為記録保管所 (海外SFノヴェルズ)

残虐行為記録保管所 (海外SFノヴェルズ)