新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

ショゴス対メカショゴス

 ウィリアム=ブラウニング=スペンサーに"The Dappled Thing"という短編がある。
 孫娘のラヴィニアが行方不明になったので探してほしいとアディソン卿から依頼されたバートラム=ラッジ卿がアフリカに出かけていくところから物語は始まる。ラヴィニアは大富豪ヘンリー=ウォリスターの探検隊に参加していたのだが、これまで発見されたのは彼らが乗っていた飛行船の残骸だけだった。ところでラヴィニアという名前のキャラが出てくると、どうせ大変なものを孕まされる役目だろうと思うわけだが、この作品ではそういうことはない。
 ラッジに率いられた救助隊が搭乗しているのは、奇人として有名なヒュー=エドモンズが発明した水陸両用メカ。「女帝陛下の栄光号」という仰々しい名前がついている。それがいかなる代物であるかは版元の公式Tumblrで挿絵をごらんいただくのが手っ取り早いだろうが(参照)、鹵獲した火星人のトライポッドを基にリバースエンジニアリングで作ったのだといわれたら信じてしまいそうだ。
 ラッジたちはヤミ族の集落でウォリスターの一行を発見した。意外にも元気そうだ。地元の湖には魔物が住み着いているとヤミ族の老人が語る。魔物は水中から出てくることができないので人間をゾンビのような下僕にし、獲物を湖までおびき寄せるのに使っていた。この魔物というのはショゴスらしいのだが、微妙にグラーキの設定が混ざっているような気がする。
 湖に近寄りすぎたラヴィニアとウォリスターが魔物に襲われる。救助隊のマロリーが操縦する「女王陛下の栄光号」が突進し、魔物との格闘が始まった。双方とも湖に沈み、再び姿を現したのはメカのほうだった。しかしメカはヤミ族を蹴散らしながら密林へと消えていき、後には内蔵されていた機械だけが残される。つまり魔物はメカから部品を引きずり出し、がらんどうになった外側を己の外骨格として利用したのだ。ラヴィニアは無事だったが、ウォリスターは魔物に連れていかれてしまった。
 辛くも救助したラヴィニアをつれて、ラッジは英国に帰還する。終わりよければ全てよしだと彼は自分に言い聞かせたが、6週間後にウォリスターがひょっこり現れる。ウォリスターはそれまでの無頼の生活をすっかり改め、ヒュー=エドモンズが発明した水陸両用メカの量産に取り組みはじめた。本気で産業化するつもりなのか、それを鎧のようにまといたがっている何者かが待っているというのか……。もしも後者だとしたら、そのときこそ真の終わりが到来するのかもしれないとラッジは思うのだった。
 多分にスチームパンクな世界観のもとでドタバタ劇が繰り広げられ、しまいにはアーマードショゴス爆誕というオチ。Lovecraft's Monsters に収録されている。

Lovecraft's Monsters

Lovecraft's Monsters

  • 作者: Neil Gaiman,Joe R. Lansdale,Caitlín R Kiernan,Elizabeth Bear,Ellen Datlow
  • 出版社/メーカー: Tachyon Publications
  • 発売日: 2014/04/15
  • メディア: ペーパーバック
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