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ラヴクラフトの遺著管理者とダーレス

 ダーレスがロバート=バーロウに宛てて書いた1945年11月12日付の手紙がA Look Behind the Derleth Mythos: Origins of the Cthulhu Mythos で引用されている。

お送りした『暗黒の儀式』を君が気に入ってくれますように……忌憚のない御意見をお聞かせください――君の言葉なら受け入れますし、逆恨みなどしませんよ。ハワードの覚書や断章を完成させてほしいと私をせっつく読者が多いです。そういう計画に着手する前に、ハワードと近しかった人たちの考えを聞いておきたいと思っています。

 バーロウはダーレスよりも九つ年下だが、ダーレスはへりくだった態度で彼に意見を求めている。バーロウはラヴクラフトから遺著管理者に指名されており、ダーレスは彼の立場を尊重していたようだ。
 当時、ダーレスとバーロウにドナルド=ワンドレイを加えた3人が共同でラヴクラフトの遺産を管理していた。これをジョージ=T=ウィッツェルは「不穏な三頭体制」と呼んでいるが、不穏だったのはバーロウとワンドレイの間だけであり、ダーレスとバーロウの関係はむしろ良好であったということが窺える。
 ロバート=E=ハワードとダーレスの「合作」として発表されたのは「黒の詩人」だけであり、それも大部分はハワードが書いたものだとロバート=プライスが指摘している。逆にいえば、ラヴクラフトとの「合作」を書くことをダーレスが躊躇しなかったのは、一番ラヴクラフトと近しかった人物であるバーロウの諒解が得られていたからなのだろう。ダーレスは豪胆な人物だったといわれるが、足場を固めることを怠りはしなかったというわけだ。

A Look Behind the Derleth Mythos: Origins of the Cthulhu Mythos

A Look Behind the Derleth Mythos: Origins of the Cthulhu Mythos