新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

ウィアードテイルズの3代目編集長

 ウィアードテイルズの初代編集長はエドウィン=バード、2代目はファーンズワース=ライトである。ライトはパーキンソン病を患っており、闘病しながら編集長を務めていたが、病状が悪化したため1940年に引退を余儀なくされた。ライトの後を継いだのはドロシー=マクルレイスで、ウィアードテイルズの終焉まで編集長の地位にあった。ウィアードテイルズを名乗る雑誌はその後も現れたが、元祖ウィアードテイルズの編集長はマクルレイスが最後である。なお彼女はウィアードテイルズだけを手がけていたわけではなく、ショートストーリーズの編集長との兼務だった。
 バードやライトに比べるとマクルレイスは影が薄い。英語版ウィキペディアにはバードやライトの項目はあるが、マクルレイスの項目はない。ライト引退後のウィアードテイルズは斜陽の一途だったと思われるかもしれないが、ロバート=ブロックは次のように述べている。

マクルレイスはあまりにも軽んじられていると思いますね。ブラッドベリスタージョン・ブラウンといった一流作家の作品を手がけた人物を無視することなんかできませんよ。それにアンノウンやF&SFみたいな競合誌と張り合えるだけの予算さえあれば、彼女はもっといろいろやれたはずなんです。でも1語あたり1セントという雀の涙ほどの稿料――しかも発行の頻度が隔月になることもあって――これでは、他誌がもっと報酬をはずんでくれるようになったら、ウィアードテイルズに残る作家なんかほとんどいなかったわけです。僕はかなり後の方まで踏みとどまっていました。たぶん、ちょっとバカだからですね(未だにバカですよ。今はテレビの脚本を書けば100倍も儲かるし、その後も再放送のたびに追加で100倍のお金が入ってくるというのに、相変わらず短編小説を書いているんですから)。でもウィアードテイルズは僕の作品を最初に買ってくれた雑誌ですし、少年時代の一番の愛読誌でした。だからウィアードテイルズには大きな借りがあるという気がしていましたし――今でもそう感じているんです。

http://mgpfeff.home.sprynet.com/flanagan_interview1.html

 ちょっと感傷的で、かつ小説家としての気概のこもった言葉だ。
Tellers of Weird Tales: Dorothy McIlwraith (1891-1976)-Part 2
 ウィアードテイルズは1954年に廃刊になったが、マクルレイスは1964年までニューヨークで仕事を続けていた。その後は、カナダのオンタリオ州に買った農場で余生を送り、1976年8月23日に世を去ったという。84年の生涯だった。