新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

成り上がり一代記

 ウムル=アト=タウィルはいまいち正体が定かでないが(参照)、リン=カーターによると彼はヨグ=ソトースの侍従長である。カーターがアブドゥル=アルハザードに仮託して書いた『ネクロノミコン』の第3巻第12章から抜粋してみる。

 忘れ去られし悠久の太古、旧世界の朧なる黎明期に、ウムル=アト=タウィルも汝の如く、この世と異界とを隔てる帳の彼方に挑み、銀の鍵の門を通り抜けた。そして地球の門の彼方にある荒涼かつ朦朧とした領域、さらなる彼方のますます奇異な世界に接する幻影の王国で、超越者に仕えるものたちとウムル=アト=タウィルは対面した。超越者とは窮極にして想像も及ばぬヨグ=ソトース、ひとつにしてすべてのもの、すべてにしてひとつのものに他ならない。
 地球のものにあらざる石から作られた峻険な脚柱の頂、多角なる玉座の上で永遠に沈思する彼らは、戸口に潜むものの眷属にして従僕である。律法者はその名を旧きものどもとする。ウムル=アト=タウィルが最大の危機にさらされた恐るべき刻、彼には案内者も守護者もいなかった。それでも、物質世界の彼方へと至る「窮極の門」を久遠に守護するものたちによって宣告された「運命」をウムル=アト=タウィルは免れたのである。なぜならウムル=アト=タウィルは内奥の自我をヨグ=ソトースに捧げたからである。果てしなき時の果てに、彼は旧きものどもの首席にして統領となった。ウムル=アト=タウィルは永久に門のところに立ち、軽率かつ不遜にも門を通ろうとするものたちに奉仕するべく待ちかまえている。ウムル=アト=タウィルを案内者として受け入れたものたちの運命は筆舌に尽くしがたし!

 つまりウムル=アト=タウィルもかつては一介の魔道士に過ぎなかったけれども、幸運と努力のおかげでヨグ=ソトースの侍従長にまで出世したということらしい。何という成り上がり人生。
 聞くところによると、今月『魔道書ネクロノミコン外伝』が学研から刊行されるらしい。カーターの書いたものが中心になる模様なので、我が国のクトゥルー神話ファンは新しい情報をふんだんに得られることだろう。

魔道書ネクロノミコン外伝

魔道書ネクロノミコン外伝