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主にクトゥルー神話のことなど。

ヨグ=ソトース解縛

 リン=カーターがアブドゥル=アルハザードに仮託して書いた『ネクロノミコン』第1巻第9章より。

ひげを生やした族長の口から私がついに聞き出したのは、その部族が無名のものどもと呼ばれている理由、そして彼らが祖国から放逐された理由であった。なぜなら彼らはアッラーとその予言者の信仰を放擲して旧支配者を崇めたからであり、往古には彼らの先祖も旧支配者に仕えていた。彼らこそは悠久の昔にヨグ=ソトースを旧神の封印から解放したものたちの末裔に他ならず、解放が行われたのは偉大なる王ランプシウスがエジプトの玉座に着いていた時代、桎梏を脱したイスラエルの民が約束の地へと至るために紅海を渡って間もない頃のことであった。

 ヨグ=ソトースが旧神の封印から解放されたとか、とんでもないことがさらりと書いてある。カーターの神話作品では、ナイアーラトテップが封印されているのにヨグ=ソトースは封印されていないという不思議な設定になっているわけだが、ヨグ=ソトースが解放されたというのはリチャード=L=ティアニーから影響を受けたものだ。カーターが他の作家の説を取り入れるのに熱心だったことが窺える。