四大説と五大説
四大首領という言葉を昨日の記事で使った。すなわち地水火風の統領であるが、これがいささか曖昧だ。水がクトゥルー、風がハスター、火がクトゥグアに率いられていることは言を俟たないが、地の勢力の領袖は誰なのか。『永劫の探求』の記述に従えば、地の神で最強なのはヨグ=ソトースである。だがヨグ=ソトースは地の神の首領というより、アザトースと共に旧支配者全体を統率する立場だ。
ヨグ=ソトースを地の神に分類することに無理があると考えたリン=カーターは、四大説に代わる五大説を提唱した。地水火風にエーテルを加えたものが五大である。Crypt of Cthulhu の36号(1985年のユール号)にカーターへのインタビュー記事が掲載されているが、そこで彼は次のように語っている。
そんなわけで僕はダーレス神話を全面的に受け入れているのですが、ただ彼が四元素しか使わなかったのは非常に間違ったことだと思っています。元素は四つだけではないということは御存じでしょう。第五元素は「エーテル」です。ヨグ=ソトースやアザトース・ナイアーラトテップといった宇宙的存在はひっくるめて「地の神」と呼んでしまうよりも、エーテルに分類するのが打ってつけだと思います。地の神とみなす理由などありません。そこで『ネクロノミコン』の第2巻では、すべての元素について古の魔術師の紋章を載せ、神々を分類することにしているのですが、少なくとも一部の神はエーテルに当てはめるつもりです――もちろん脚注で「ダレット伯爵は『屍食教典儀』でこれを無視しているが、あるいは第2巻の完全版を読んでいなかったのかもしれない」と説明しておきましょう。
ヨグ=ソトースらを「外なる神」として旧支配者から切り離すクトゥルー神話TRPGの設定に近い発想といえるだろう。カーターがアブドゥル=アルハザードに仮託して書いた作品は、ケイオシアムから刊行されたThe Necronomicon に収録されているが、そこでは確かに五大説が用いられている。
- 作者: Robert M. Price
- 出版社/メーカー: Chaosium
- 発売日: 2003/02
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