新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

いじめられっ子ラヴクラフト

 ラヴクラフトがダーレスに宛てて書いた1932年6月6日付の手紙から。

私の駄作「魔女の家の夢」に対する君の反応は予期しておりましたが──そこまでひどくはないだろうと自分では思っていたのです。題名がまずいというのには同意しますが、「ブラウン=ジェンキン」では一層よくないでしょう。この件を鑑みるに、私の作家人生はそろそろ終わりなのでしょう。いずれにせよ、必要だとずいぶん前にいった長い休暇をとらなければならないようです。原稿はクラーカシュ=トンには送っていないでしょうね。どうか私のところに返送し、安らかに眠らせてやってください。文章表現の対象を全面的に見直して一から出直すのでない限り、もう何も書けなさそうです。従来の短編小説という作品形態は本質的に安っぽく嘘くさいものであると確信いたしましたし、代替となる表現手段を見つけない限り自分はおしまいだと思っています。

 「魔女の家の夢」の原稿をダーレスに見せて意見を求めたところ厳しい評価だったので、いじけている。そんなことをいいながらダーレスは「魔女の家の夢」をこっそりウィアードテイルズに送って受理させ、ラヴクラフトに140ドルを稼がせたのだった。