ナイアーラトテップの奥さん
C.A.スミスによると、女神イホウンデーはナイアーラトテップの妻である。スミスがロバート=バーロウに宛てて書いた1934年9月10日付の手紙がボイド=ピアソン氏のサイトで公開されているが、そこには次のような記述がある。
イホウンデーと魔笛の奏者ナイアーラトテップの婚姻の件ですが、何らかの情報がノームによってほのめかされているのではないかと推測したいところです。引用いたしましょう。「神性第3期のホウンデーは、混沌と頽廃の陰惨なる音楽を延々と吹奏し続ける落し子の庇護下にあった」これがアザトースの楽師に言及したものでないのでしたら、次に火星から輸入されるセグル火酒を生のまま1ガロンでも一気飲みして進ぜましょう。
Letter to Robert Barlow From Clark Ashton Smith on 10 September 1934
この書き方だと、まずバーロウの側からナイアーラトテップ・イホウンデー夫婦説を持ち出し、スミスが彼に調子を合わせてやったように見える。当時バーロウは16歳だった。なお、くだんの手紙はアーカムハウスのスミス書簡集には収録されていない。
イホウンデーはザイヒュームなるアルケタイプの娘であるともスミスは述べている。したがってナイアーラトテップとイホウンデーの間には相当な歳の差があることになるが、夫婦というよりは保護者と被保護者の関係に近いのかもしれない。アザトースの傍らで笛を奏でている魔神とナイアーラトテップをスミスが同一視しているのも興味深い。ラヴクラフトがこの夫婦説のことを知っていたかどうかは残念ながら定かでないようだ。