新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

不死者マイラクリオン

 ティームドラ史上最高の魔道士と謳われたマイラクリオンだが、クトゥルーと関わったことが原因で破滅した。その顛末をブライアン=ラムレイは"Mylakhrion the Immortal"で語っている。
 マイラクリオンが世を去ってから1100年後、その子孫であるテフ=アツトは彼の霊を呼び出し、不死の探求について訊ねる。魔法の力で非常な長命を保ったマイラクリオンだが、不死そのものを得ることはできなかった。現にマイラクリオンが死んでしまっていることからも、それは明らかだ。
 ご先祖様が挫折したところから研究を引き継ぎ、あわよくば完成させて不死を勝ち取るというのがテフ=アツトの計画だったが、マイラクリオンには「坊や、お馬鹿さんだね」などと軽くあしらわれてしまう。いいから話を聞かせてくれというテフ=アツト。子孫にせっつかれてマイラクリオンは重い口を開いた。
 永遠の生命を求めて様々な方策を試した末にマイラクリオンが行き着いたのはクトゥルーの伝説だった。なぜならクトゥルーを首領とする旧支配者こそは不死を体現した存在だからだ。

旧支配者がどこから来たのか、どこへ行くのかは誰にもわからない。旧支配者は人類以前から存在し、人類以後も存在する。地球が生まれる前から旧支配者は星々の間を闊歩していた。そして太陽が燃え尽きた後も旧支配者は生きながらえるだろう。

 マイラクリオンは夢でクトゥルーと会って取引し、様々な知識に加えて不死の秘訣を授かった。しかし、その代表としてクトゥルーがマイラクリオンに要求したのは、旧神に封印されている旧支配者の解放を手伝うことだった。その時になってマイラクリオンは軽率な取引を後悔し、クトゥルーの下僕となることを拒んだが、契約に違反したからには制裁を受けなければならない。マイラクリオンは手を尽くしてクトゥルーから我が身を護ろうとしたが、無駄だった。怒り狂ったクトゥルーがマイラクリオンの夢を訪れる。さすがのマイラクリオンもクトゥルーの前には為す術がなく、尖塔の上から身を投げて死ぬことを余儀なくされた。
 こうしてマイラクリオンは不死を得るどころか逆に寿命を縮めてしまったのだが、少なくともクトゥルーから秘訣を授かりはしたわけだ。その秘訣とは何だったのか? テフ=アツトに乞われてマイラクリオンは秘密を明かすのだが……。
 オチは伏せておくが、結局のところ人間は不死など望まないほうがいいらしいという話である。何といっても、この話の一番の見所は下僕を増やすために地道に営業しているクトゥルー様だろう。マイラクリオンを釣るために時空の秘密をいろいろと教えてやるのだが、肝心の不死の秘訣が案外しょぼいものだったというあたりは悪徳商法っぽい。だが、約束を破ったマイラクリオンにお仕置きする場面はさすがに大邪神の貫禄満点だった。