新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

ラヴクラフトに捧げるラブソング

 The Xothic Legend Cycle はリン=カーターのクトゥルー神話作品集である。同書に対するW.H.パグマイアの書評を見てみよう。

こういう作品は陳腐で退屈で非ラヴクラフト的だと皆さん非難してきたわ。でも私はカーターの作品を何度も読み返している。それは、才能を過小評価されている男が書いた愉快なクトゥルー神話作品を読むという紛う方なき喜びのためよ。この本は、H.P.ラヴクラフトのすばらしい作品をこよなく愛する男のラブソングなの。

An Obsession with H. P. Lovecraft

 言い得て妙だと思う。私は神話作家の中で一番カーターが好きなのだが、それはラヴクラフトと彼の作品に対する愛情をカーターからもっとも強く感じるからかもしれない。パグマイアは次のように言葉を続けている。

この本を編集し、註をつけたのは今一人の迷える魂。クトゥルー神話が大好きで、神話の歴史とその創造者たちのことにすごく詳しい人よ。ボブ=プライスの序文は神話とその歴史の事実と想念でいっぱいで、読むだけで胸がわくわくするわ。The Xothic Legend Cycle はあらゆる点で楽しい本。陽気だけれども敬虔なラヴクラフト風模作がお好きな人に強くお薦めするわ。

 パグマイアのいうように、カーターの作品だけでなくプライスの解説まで合わせて読むことで余計に楽しめるようになっている。The Xothic Legend Cycle の約半分を邦訳したものが『クトゥルーの子供たち』だが、これには訳者である森瀬・立花両氏の注釈と解説がつき、さらに豊潤さが増しているといってよい。残りの半分もいずれ日本語で読めるようになることを切に願う次第だ。

クトゥルーの子供たち

クトゥルーの子供たち