京都のウィギワガ博物館
1734年3月28日付*1のジェイムズ=F=モートン宛書簡でラヴクラフトは「ツァトゥグアの眼」の話をしている。
忘れ去られし太古の世界より受け継がれてきたのは地獄めいた石の秘密――『エイボンの書』でほのめかされている『ツァトゥグアの眼』のことを考えてもごらんなさい。そしてカナカの漁師がポナペ島の沿岸で網にかけた薄紫色の怪物像を! 神よ! この不浄なる像を特殊な単光太陽写真機で精査した京都のウィギワガ博物館の館長が切腹した理由を世界が知るようなことがあれば!
ラヴクラフトがツァトゥグアの眼に言及したのは、この一回だけらしい。どう見てもウィギワガは日本の博物館の名称ではないが、あるいは宇治川が転訛したものではないかと友人が指摘してくれた。
鉱物学をモチーフにした探偵小説を一緒に書こうとモートンが知人から持ちかけられたので、ラヴクラフトたちはその話題で盛り上がっていたようである。古代の遺物が漁師の網にかかるという展開をラヴクラフトは「闇をさまようもの」で実際に使っているが、モートンと文通するときはクトゥルー神話ネタでちょくちょく盛り上がっているあたり、やはり気心の知れた仲だったのだろう。