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主にクトゥルー神話のことなど。

グラーキ最後の黙示

 ラムジー=キャンベルのクトゥルー神話中編The Last Revelation of Gla'aki を読んだ。今年の6月にPSパブリッシングから刊行された作品だ。

The Last Revelation of Gla'aki

The Last Revelation of Gla'aki

 何だかウニみたいなものが表紙に描かれているが、これが正面から見たグラーキ様のお姿ということになる。日本のアマゾンでは取り扱われていないが、米アマゾンで出品されているものも値段がやけに高いので、アマゾンを利用するなら英国から取り寄せるのがいいだろう。
http://www.amazon.co.uk/dp/1848636172/
 英米を合わせると5件のレビューがあり、すべて星五つという高い評価だ。マット=カーペンターによるものはとりわけ参考になるだろうが、彼が述べているように物語自体は割と単純である。ブリチェスター大学図書館の蔵書が焼き払われて以来、もはや地球上に存在しないのではないかといわれていた稀覯書『グラーキの黙示録』が見つかる。ブリチェスター大学に勤める主人公レナード=フェアマンは『グラーキの黙示録』を手に入れるためにガルショーの町を訪れることになるが、フェアマンが調べ上げた同書の書誌情報は森瀬繚さんが紹介している。

ちなみに、竹岡氏は既に読了したそうで、「これはまさしくキャンベル版『アーカム計画』」「フリッツ・ライバーの『闇の聖母』に雰囲気が似ている」(大意)とのことです。

『グラーキの黙示録』の最新設定 - 墨東ブログ

 もっとも『闇の聖母』と共通するところが設定や粗筋にあるというわけではない。似ていると私が感じたのはひとえに雰囲気のせいだ。
 作中にはキャッスルロックやセスカ峡谷への言及がある。キャッスルロックはスティーヴン=キングの、セスカ峡谷はW.H.パグマイアの創造した地だが、この辺はクトゥルー神話の伝統的なお約束といえるだろう。また『グラーキの黙示録』は全9巻ということになっているのだが、この作品でキャンベルは初めて各巻の題名を明かしている。

  1. On Conjuration
  2. On the Purposes of Night
  3. Of the World as Lair
  4. Of the Secrets of the Stars
  5. Of Humanity as Chrysalis
  6. Of Things Seen by the Moon
  7. Of the Symbols the Universe Shows
  8. Of the Dreaming of Creation
  9. Of the Uses of the Dead

 フェアマンはガルショーの住人を訪ねて回り、『グラーキの黙示録』を一巻ずつ受け取っていく。すべての巻をそろえたとき、彼を待っている運命とは……? 淡々と進行するにもかかわらず、非常に興奮させられる話だった。
 なお、十字が魔を祓うという『ネクロノミコン』の記述はアブドゥル=アルハザードの原典にあるものではなく、ジョン=ディーの後付けだと『グラーキの黙示録』に書いてあることになっているのだが、これはフランク=ベルナップ=ロングの「喰らうものども」が元ネタと思われる。こんなところでもロングはいじられる役目なのだった。