ラヴクラフトは1936年6月5日付のダーレス宛書簡で天文学の勉強を勧めている。
天体――月・惑星・星座など――の運行に関する知識があれば、どんな作家にとっても役に立ちます。雰囲気を盛り上げるための素材になりますし、おかしな勘違い(夕方の東天に金星があるとか、細い三日月が真夜中の空高くかかっているとか、オリオン座とさそり座が同時に見えるとか)をして恥ずかしい思いをすることもなくなるからです。
それから28年後にラムジー=キャンベルが発表した「恐怖の橋」には次のような記述がある。
秋の気配が近づいたある夜、ブリチェスターの住民は不安感をつのらせて無口になっていた。目玉のようなフォーマルハウトが地平線上に姿を見せ……
『クトゥルフ神話への招待』(扶桑社)244ページ
「秋の気配が近づいたある夜」は初稿では「その後すぐのある夜」となっていたのだが、ダーレスが書き直させた。その理由を彼は1961年10月18日付のキャンベル宛書簡で説明している。
「その後すぐの」では3月の直後という意味になってしまいますから、書き直すべきですね。フォーマルハウトが昇ってくるのは晩夏になってからなのですから。
私の感想。ダーレスは案外きちんとラヴクラフトの教えを守っている。

クトゥルフ神話への招待 ~遊星からの物体X (扶桑社ミステリー)
- 作者: J・W・キャンベルJr.,H・P・ラヴクラフト,ラムジー・キャンベル,増田まもる,尾之上浩司
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: 文庫
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