新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

「詩と神々」余話

 ラヴクラフトとアンナ=ヘレン=クロフツの合作「詩と神々」には「日本の空に浮かぶ月……」という自由詩が出てくる。ラヴクラフトは自由詩を嫌っていたから、この詩はおそらくクロフツが作ったものだろうと『H.P.ラヴクラフト大事典』には書いてあるが、実はエリザベス=コーツワースという人の"Sky Lotus"からの借用であったことが近ごろ判明したそうだ。
http://www.thefossils.org/fossil/fos341.pdf(PDF)
 クロフツがコーツワースの詩をパクッたことをラヴクラフトが知っていたかは不明だが、こんなことまで調べ上げている人がいるとは恐れ入った。なおコーツワースは日本に来たことがあり、日本を舞台にした『極楽にいった猫』という童話を書いている。

極楽にいった猫

極楽にいった猫

 釈迦涅槃図を描くよう寺から注文を受けた絵師。伝説では猫は釈尊の臨終に居合わせなかったことになっていたが、絵師は愛猫のためを思って絵に猫の姿を描き加えてしまう。絵は売れなくなったが、いつの間にか涅槃図の中ではお釈迦様が猫に優しく手を差し伸べていた――という話である。ラヴクラフトが聞いたら喜びそうだ。