新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

本を出すには歳をとりすぎた

 ラヴクラフトがダーレスに宛てて書いた1928年7月25日付の手紙から。当時ダーレスは自費出版を考えており、ラヴクラフトに意見を求めたようだ。

君の作品集を出版するというのは、いい考えですね。君とクックなら打ち合わせもうまく行くだろうと思います。残念ながら、出版の費用がいくらになるかは見当がつきません。「忌まれた家」を出版する費用は私が負担するわけではないからです。あの企画はクックが一人で自腹を切ることになっておりまして──自分の作品が出版されることになろうとも、私自身は1セントたりとも支払わないでしょう。それで利益が出るとは思えませんし、自分の作品を出版したがるには私は歳をとりすぎているのです。「忌まれた家」を出版したいと言い出したのはクックで、お金をどぶに捨てるようなものだからやめておけと私が衷心から忠告したにもかかわらず、その企画に取り組んでいる最中です。

 クックというのは、ラヴクラフトの友人で印刷業を営んでいたW=ポール=クックのこと。歳をとりすぎているから本を出せないといったラヴクラフトはまだ37歳だったが、彼が年寄りぶるのはいつものことだ。