合作する動機
ラヴクラフトがロバート=バーロウに宛てて書いた1934年9月25日付の手紙より。
仕事として他人の作品を機械的に書き直すことはありますが──作品の見てくれなど気にせず、商売だと割り切ってやるしかない仕事です──それを除けば、私が他の人の執筆を手伝ったり代作したりするのは2種類の場合に限定されています。第一に──とっかかりを必要としている正真正銘の初心者を私は助けるようにしています。自分はあなた方と長く付き合うわけにはいかないが、必要とされている手法について着想を得るのを手伝って差し上げたいのだと私は事前に言い渡します。その人たちに本物の才能があれば、そんな手伝いをする必要はすぐさまなくなるでしょう。才能がないようなら、見こみがないと判明した時点で放置します。いずれにせよ、私の手伝いが1年より長く続くことはありません。第二に──励ましとなる影響を必要としている高齢者や障碍者を助けることがあります──この場合、向上が見こめないとわかっていても私は手伝うようにしています。そういう恵まれない人たちが世間的に過大評価されるという弊害が生じるとしても、その人たちが生きていく上での支えを少しでも差し出してあげることの方がずっと大事だというのが私見です……。
つまり介護としての合作というわけである。なおバーロウ自身もラヴクラフトと6編を合作しているが、「新世紀前夜の決戦」や「崩壊する宇宙」のような作品はいずれの場合にも当てはまらないように思われる。それらはラヴクラフトその人の純粋な楽しみのために書かれたものというべきだろう。