魂を屠る者
チェイムバーズの著書として取りあげるべきは、超自然の恐怖にかかわる『選択の神秘』、表題作が純然たるロマンス小説にすぎないので誤解されがちな『天国の樹』、精神力による世界支配の発動を描く長編小説『魂を屠る者』だろう。ラヴクラフトはチェイムバーズをろくに読んでおらず、書名だけを見て想像をたくましくしたといわざるをえない。
大瀧啓裕『文学における超自然の恐怖』287ページ
『魂を屠る者』というのはSlayer of Souls のことだろう。この作品を取りあげるべきだったと大瀧先生はおっしゃっているが、アーカムハウスのラヴクラフト書簡集第2巻に収録されている1927年10月1日付のC.A.スミス宛書簡でラヴクラフトは次のように述べている。
ロバート=W=チェンバースの『魂を屠る者』にはひどく失望させられました──四半世紀も流行作家として生きてきた後では『黄衣の王』の頃の雰囲気には戻れないのでしょう!
スミスも『魂を屠る者』のことが気に入らなかったようで、1934年7月31日付のレスター=アンダーソン宛書簡で「言い様もなく下劣な作品」と述べている。
ちなみに『魂を屠る者』の原文はネット上で公開されているのだが、*1白状すると私はまだ読んでいない。何しろラヴクラフトとスミスの二人が揃って酷評しているものだから、いまいち気乗りがしないのだ。
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