新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

実は三つ子だったウェイトリー兄弟

 クトゥルー神話の珍説のひとつに「『ダニッチの怪』のウィルバー=ウェイトリーには不可視の怪物以外の兄弟がいた」というものがある。W.H.パグマイアとロバート=M=プライスの合作である"The Tree-House"という短編で唱えられている説だ。
 "The Tree-House"は、ケイオシアムのアンソロジーThe Dunwich Cycle に収録されている「ダニッチの怪」の後日談で、ウィルバーの従兄弟の息子であるジョン=ウェイトリーという男が主人公だ。本来は失敗作だったのだが、プライスが手を入れてくれたおかげで格段によくなったとパグマイアは述べている。*1
 父親の残した日記を読んだジョンがウィルバーの足跡をたどるうちに物語はダニッチを遠く離れ、パグマイアが創造した西海岸のセスカ峡谷へと舞台を移す。そこにはラヴィニア=ウェイトリーが住んでいた! 彼女は生きていたのだ。
 ジョンがラヴィニアの住所を訪ねると、大木の上に粗末な小屋が造られていた。聖母ラヴィニアはそこで暮らしているのだ。そしてラヴィニアの息子ディディマス=ウェイトリーが登場する。ウィルバーが死んだ後でラヴィニアが新しく産んだ子かと思いきや、ディディマスはウィルバーの兄弟だった。つまり、双子だとばかり思われていたウェイトリー兄弟は実は三つ子だったというわけだ。
 こんなところにお母さんを住まわせておくのはよくないというジョンにディディマスは説明する。その場所はヨグ=ソトースの住まう超空間への門に当たる地点で、そこに留まることによってラヴィニアは生命を維持しているのだった。それにしても普通の家を建てればいいのに、こんなツリーハウスでは不用心すぎないか? と訝るジョン。ディディマスはいう。
「いや、これ樹じゃないし」
 樹木と見えたのは実はショゴスだった。大木に擬態したショゴスの上の家にはちょっと住んでみたいかもしれない。なおW.H.パグマイアのHはホップフロッグの頭文字だそうだが、何から何まで冗談のような話だ。

The Dunwich Cycle: Where the Old Gods Wait (Cthulhu Cycle Books)

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