新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

地球の変容

 "The Metamorphosis of the World"という短編を書き上げたことをC.A.スミスは1930年1月27日付の手紙でラヴクラフトに報告しているが、この作品はウィアードテイルズの1951年9月号に掲載されるまで21年間も日の目を見ることがなかった。22世紀末の地球を金星人が侵略するという話で、今日では"The Metamorphosis of Earth"という題で知られている。構想が陳腐だとスミス本人は1937年5月16日付のロバート=バーロウ宛書簡で辛口の評価を下しているが、なかなか迫力のある作品に仕上がっている。まだ邦訳はないが、原文は例によってボイド=ピアソン氏のところで読める。*1
 この作品において、金星人は地球の環境を作り替えるために遊星爆弾のようなものを投下し、地球上のあちこちが異次元の色彩に浸食されたような状態になってしまう。その描写はさすがにスミスらしく鬼気迫るものであり、なかなか姿を見せない金星人も不気味だ。人類がようやく反撃に転じたところで物語は終わり、次のような言葉で締めくくられている。

異界の敵との長く破滅的な戦いに人類が敗れ去るようなことになろうとも、その生存と苦闘の物語が無駄に語られたことにはなるまい。

 ここまで熱い言葉がスミスの作品に出てくるのは珍しい。その点で意外な一編である。