新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

クトゥグア

しかし、どうもエレメント設定を持ち込んだときに空席だった火の枠を埋めるためだけに考案された神だという気がします。
クトゥグア - そっちはそっちの気晴らし、こっちはこっちの気晴らし

 ロバート=プライスによると、まさにその通りだそうだ。リチャード=L=ティアニーの「メルカルトの柱」(The Pillars of Melkarth)のためにプライス博士が書いた解説でクトゥグア誕生の経緯が語られている。旧支配者は水風地火の四大に分類できるというが、それにしては火の神がいないではないかとフランシス=T=レイニーが指摘したので、ダーレスは穴埋めのために火神クトゥグアを創造した。神のために属性があるのではなく、属性のために神がいるようなものだ。そのことを象徴するかのようにクトゥグアの初出はレイニーの「クトゥルー神話小辞典」であり、水風地火の中では火の陣容がもっとも貧弱だった。火の神はクトゥグアのみという状況が解消されるのは1970年代、アフーム=ザーやフタグアといった新しい火神をリン=カーターが追加してからのことである。
 なおティアニーの「メルカルトの柱」はシモン=マグスを主役とするシリーズ中の一編で、西暦50年のローマ帝国が舞台となっている。クトゥグアを利用して遙かな高みまで昇り詰め、最終的にはアザトースの玉座から全宇宙を支配しようと企てる魔道士マッタンにシモンが立ち向かうという話である。地水の脅威に対抗するために人類が火風の力を頼るというのがクトゥルー神話のお約束だが、「メルカルトの柱」ではダゴンの祭司たちがシモンに協力して火の魔道士と戦ってくれる。ティアニーらしい発想の逆転というべきだろう。