日本・中国連合対米国
C.A.スミスに「混沌空間」という短編がある。日中連合と米国が戦争している1976年の世界が舞台で、軍機を盗み出した日中連合の敏腕スパイ・坂本を追う二人組が奇怪な異次元空間に飛び込んでしまうという話だ。1932年に発表され、野田昌宏による邦訳が『世界SF全集』(早川書房)の第31巻に収録されている。また原文はボイド=ピアソン氏のサイトで無償公開されている。*1
戦前の作品で、日本人の男は正義によって、丸焦げになる運命ですってなんだかなぁ、日本人の私としてはいい気持ちがしませんね。もっとも戦前、戦中に書かれた作品だから、あめちゃんからみたら、日本人って悪くて異世界でも抹殺される運命にあるのだなぁと思いました。
Anima Solaris
このような感想を抱く人が多いようだが、次のような記述が「混沌空間」にあることは注目に値する。
スパイがサンフランシスコに辿り着くことは何としてでも阻止しなければならなかった。敵が築き上げた難攻不落の基地がサンフランシスコにはあるのだ。
すなわち、日中連合軍はすでに米国西海岸への上陸作戦を開始しているのだ。表面的にはスパイを退治してめでたしめでたしという物語だが、注意深く読むと実は負け戦であることに気づかされるわけで、なかなか意地が悪い。余談だが、スミスは1937年5月16日付のロバート=バーロウ宛書簡*2で次のように述べている。
私見では西洋文明全体が大崩壊の寸前まで来ており、階級闘争の拡大はその崩壊を阻止するよりもむしろ助長することになるでしょう。その後は──太陽は東から昇るというのは耳慣れた言い回しですよね。
西洋が没落した後に日本と中国が勃興することになるとスミスは予想していたらしい。階級闘争云々は、共産主義者だったバーロウへの皮肉だろう。
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1971
- メディア: ?
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (2件) を見る