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主にクトゥルー神話のことなど。

ウィスコンシン川 千の島の河

 今日がオーガスト=ダーレスの命日であることに因み、彼の著作をひとつ紹介させていただく。

The Wisconsin: River of a Thousand Isles

The Wisconsin: River of a Thousand Isles

 残念ながら邦訳はまだないが、題名は『ウィスコンシン川 千の島の河』とでも訳せるだろう。「アメリカの川」という叢書の一冊として1942年に刊行された本である。「アメリカの川」は著名な作家たちがそれぞれ米国の代表的な河川をひとつずつテーマにして本を書くというもので、「米国民が自らの祖先と国土のことを正しく知り、自らの歴史に誇りを持つ」ことを目的としていた。
 そしてウィスコンシン川を担当することになったのがダーレスだった。ウィスコンシン川の流域で暮らしていた先住民族の物語にダーレスは多くのページを割き、白人に土地と生活の手段を奪われた彼らの運命を克明に書き綴っている。なるほど、米国民に自らの祖先と国土のことを正しく知らせる本ではあるが、叢書を立ち上げた人たちの思惑からは少々ずれていたのではないかという気がしないでもない。しかし『ウィスコンシン川 千の島の河』は今日ではダーレスの最高傑作のひとつと見なされている。