新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

日本映画とラヴクラフト・サークル

 ダーレスがラムジー=キャンベルに宛てて書いた1963年3月7日付の手紙から。

昨日、映画を観て帰宅すると君の2日付の手紙が届いておりました。私が観てきたのは「用心棒」といって、日本流「西部劇」の新作です――流血を始めとする暴力がふんだんに盛りこまれた映画なのですが、しかし大いに気に入りました。私が鑑賞したことのある日本映画(「羅生門」や「七人の侍」など)には、一貫して高潔さがあるようです。

 どうやらダーレスは黒澤明の映画が好きだったようだ。「日本流西部劇」とは変な言い方だが、彼は日本の時代劇と米国の西部劇を等価なものと見なしていたのだろう。実際「用心棒」は西部劇「荒野の用心棒」としてリメイクされている。

 またダーレスは黒澤明だけでなく新藤兼人の作品も鑑賞していた。「鬼婆」ほど心を乱す映画は何年も観たことがなかったと彼は1967年10月1日付の手紙でキャンベルに語っている。ラヴクラフト葛飾北斎安藤広重の区別がつくほど浮世絵に詳しかったが、ダーレスも別の方面から日本に親しんでいたわけだ。
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