猫の騎士道精神
マグヌス=オスターベルク伯爵という名の猫がラヴクラフトの家の近所にいた。この猫が喧嘩をしているところを見たラヴクラフトは、仰向けにひっくり返った相手を攻撃せずに待ってやる態度がとても紳士的だとロバート=E=ハワードに語っている。1933年12月3日付の手紙でハワードは次のように返事をした。
いただいた御手紙も同様に興味深く拝読したのですが、とりわけ喧嘩の場面がおもしろかったです。ひっくり返った敵をオスターベルク氏が攻撃しようとしなかったことに騙されてはなりません。それは騎士道精神などではなく、敵の作戦を見破っていただけです。その態勢から攻撃するには腹部を敵にさらさなければならず、とても危険だということがオスターベルク氏にはわかっていたのです。地面に倒れて相手の防御の内側に入りこむというのは、テーベのように歴史の古い戦法です。
地面に寝ている相手は迂闊に攻撃できない。ボクシングをやっていたハワードらしい分析だ。何にせよ、猫の喧嘩について熱く語り合える友達がいるというのはいいものだ。