アルハザードの対句
id:SerpentiNagaさんのTwitterから。
アルハズレッドの二行聯句”That is not dead which can eternal lie, And with strange aeons even death may die.”の諸家の訳をほぼ年代順に引用してみる。
— 江波倉子(CV雨宮伊都) (@serpentinaga) 2010年1月18日
矢野浩三郎訳「クトゥールーの喚び声 第2部 ルグラス警部の話」(早川書房『ハヤカワ・ミステリ・マガジン 1972年1月号(189号)』昭和四十七年一月一日印刷発行)「それは永劫に臥せる死者にあらずして/未知なる古生代にては死さえも死すべし」
— 江波倉子(CV雨宮伊都) (@serpentinaga) 2010年1月18日
仁賀克雄訳「クートゥリュウの呼び声」(ソノラマ文庫海外シリーズ21『暗黒の秘儀』 昭和六十年十一月三十日初版発行、1972年創土社刊ラヴクラフト傑作集『暗黒の秘儀』の改訂復刻版)「永遠に横たわれるもの、そは死せるにあらず。未知なる時の流れをもってせば、死をも超越せり」
— 江波倉子(CV雨宮伊都) (@serpentinaga) 2010年1月18日
宇野利泰訳「クトゥルフの呼び声」(創元推理文庫『ラヴクラフト傑作集2』 昭和五十一(1976)年八月二十日初版発行)「永遠の[とわ]の憩いにやすらぐを見て、死せるものと呼ぶなかれ/果て知らぬ時ののちには、死もまた死ぬる定めなれば」
— 江波倉子(CV雨宮伊都) (@serpentinaga) 2010年1月18日
波津博明訳「廃都」(『真ク・リトル・リトル神話大系(1)』国書刊行会, 1982.07)「久遠に臥したるもの、死することなく、怪異なる永劫の内には、死すら終焉を迎えん」
— 江波倉子(CV雨宮伊都) (@serpentinaga) 2010年1月18日
大瀧啓裕訳「無名都市」(創元推理文庫『ラヴクラフト全集〈3〉』 1984年3月30日)「そは永久[とこしえ]に横たわる死者にはあらねど/測り知れざる永劫のもとに死を超ゆるもの」
— 江波倉子(CV雨宮伊都) (@serpentinaga) 2010年1月18日
大久保ゆう訳「クトゥルーの呼び声」(パンローリング社オーディオブック、2009年)「とこしえに休みうる、死ぬことはなく、して、超ゆる永劫あらば、死すら死なん」
— 江波倉子(CV雨宮伊都) (@serpentinaga) 2010年1月18日
……矢野先生(旧訳版。定本ラヴクラフト全集版では波津先生訳をそのまま使用)と大瀧先生がおんなじとこで間違えてらっしゃるのは興味深いです。あと大久保先生、擬古文がまともに綴れないのなら無理なさらず素直に現代口語文で訳されたら良かったのではないでしょうか。
— 江波倉子(CV雨宮伊都) (@serpentinaga) 2010年1月18日
因みに私が訳するとこんな感じです。「尽未来臥しあたふと雖も、そは死せるものには非ず、前所未知の多劫を経なば、恐らくは死すらも死せむ」
— 江波倉子(CV雨宮伊都) (@serpentinaga) 2010年1月18日
たいへん参考になる。ちなみに私自身の訳は「永久に横たわれるものは死せずして、奇異なる永劫のもとには死すら死滅せん」だ。味も素っ気もないが、無理をしないようにした結果こうなった。この拙訳は『邪神伝説 クトゥルフの呼び声』で使われている。
- 作者:ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
- 発売日: 2009/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
2010年2月16日追記
大久保ゆう訳は正確には「とこしえに 休みうるもの 死ぬことはなく / して超ゆる永劫あらば 死すらも死なん」だそうだ。ご本人(id:bs221b)の指摘により、訂正させていただく。詳しくはコメント欄を参照されたい。