新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

闇に葬れ

 クリス=J=カーのサイトラヴクラフト作品の版権について詳細に論じているが、そこに参考資料としてジョージ=T=ウィッツェルの文章が掲載されている。*1ウィッツェルが紹介している逸話のひとつは、以下のようなものだ。

 ジェイムズ=W=トーマスというブラウン大学の学生がラヴクラフトをテーマにして修士論文を書き、それを書籍として出版する許可をダーレスに求めた。トーマスの論文はラヴクラフトの人となりをひどく歪曲し、軟弱・自己中心的・無責任・差別的な引きこもりとして描いているというのがダーレスの見解だった。ダーレスはドナルド=ワンドレイとロバート=バーロウに相談し、君のラヴクラフト論の出版はまかりならんとトーマスに申し渡した。

 当時、ラヴクラフトに関する文書の管理はダーレス・ワンドレイ・バーロウの三頭体制で行われていたとウィッツェルは指摘しているが、ドロシー=M=グローブ=リタースキーのダーレス伝はこれに興味深い情報を付け加えている。すなわち、ダーレスはロバート=ブロックにも相談していたというのだ。トーマスの論文が偏向しているのであれば闇に葬ってしまえとブロックは主張し、ダーレスも彼に同意した。
 ラヴクラフト絡みでアーカムハウスから圧力があったという話はよく耳にするが、実はダーレスの独断専行ではなく合議制だったわけだ。ラヴクラフトの思い出を汚すような輩は片端から潰せという合意が「ラヴクラフト・サークル」の主要メンバーの間で形成されていたということだろう。

付記

 id:SerpentiNagaさんのTwitterから。


 SerpentiNagaさんが言及している私のmixi日記と本日の記事はほぼ同一の内容である。

*1:The Lovecraft Scholar(PDFファイル)