新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

妖精の呪いとラヴクラフト

The Luck of Edenhall

 英国のヴィクトリア&アルバート博物館が所蔵しているグラスのことをラヴクラフトは1934年3月19日付の手紙でロバート=バーロウに語っている。
宮殿とモスクの至宝: The Palantir
 上の記事にある通り、本当はシリアあたりで制作されたものらしいのだが、マスグレーヴ家の人間が妖精から盗んだという伝説がある。もしもグラスが壊れればマスグレーヴ家は不幸に見舞われるだろうという妖精の予言を基に、ドイツの詩人ルートウィヒ=ウーラントがバラードを書き、これにはヘンリー=ワーズワースロングフェローによる英訳がある。*1
 ウーラントの詩ではグラスは砕け散ってマスグレーヴ家も滅亡し、一人だけ生き残った老僕が「いつの日か、地球もこのグラスのように砕けてしまうのか」と述懐したことになっている。無論これは史実ではないが、人間の傲慢さを戒める結末となっており、なかなか考えさせられる。
 ラヴクラフトにいわせると、このマスグレーヴ家は彼の先祖に当たるそうだ。自分が災いに巻きこまれないとも限らないから、博物館にあるグラスを壊そうとする輩が現れないことを願います──とラヴクラフトはバーロウ宛の手紙で述べている。