新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

整形した異星人

 C.A.スミスがラヴクラフトに宛てて書いた1930年10月24日付の手紙から。

ところで、ラヴクラフトさんの「闇に囁くもの」を読んで思いついたことがあるのですが、僕よりもあなたの方がうまく発展させられそうです。整形手術を受けて人間そっくりに顔を変えた異星人(その手術をやるのは仲間の異星人でもいいし、人間の整形外科医でもいいでしょう)の話を書くというのはいかがでしょうか。もちろん、彼の肉体は人間の服をまとっていても「ひどく怪物じみた」ものであり、彼の正体を示唆する不穏な出来事が次々に生じます。あなたがこの考えをお気に召すのであれば、完璧に仕上げてくださるだろうと思います。

 これを受けて、ラヴクラフトは備忘録に次のように書き留めた。

異界の住民――仮面(場合によっては人皮製)をつけるか、あるいは手術で顔を変えて人間に化けるが、服の下の肉体は異星人のまま。地球に来て人間社会に混じろうとする。おぞましき暴露。CASが提案してくれた。

 すなわち「銀の鍵の門を超えて」の元ネタである。結局ラヴクラフトは整形手術ではなく仮面の方を選んだが、ラヴクラフトとスミスが意見を交換していた一例として興味深い。